自称阪神タイガース評論家（跡地）

だが、甲子園で一番大きい声援を受けるのは誰？と聞かれれば、桧山じゃないかな？という気がする。
まあ、どっちかと言えば打つ方だし、どっちかと言えば勝負強いし、どっちかと言えば守備も安定しているし、どっちかと言えばかわいい顔してるし、性格も穏和で、誰からも愛されるタイプだとは思う。しかしあの声援の大きさは、こう言っちゃ何だが、「分不相応」な気がする（笑）。そのことについて考えると、本当にわからくなっちゃう（笑）。

最近の研究では、桧山が、何か人を惹き付ける特別な「術」を使っているという説が有力だ。多くの選手のヒッティングマーチが改変を迫られた時も、桧山の歌は、その独特な踊りとともに保存された。あの歌を歌い踊っている時、大人も子どもも、虚ろな目をしながら、異常な興奮状態なので、あれが術の秘密なのだろう（笑）。

もちろん「術説」の他にも桧山の球歴にその秘密を求める説もある。泥沼の暗黒期、実績もない中で４番打者に抜擢され苦悩する。その後、「期待料込み」でレギュラー起用され、長打力を発揮しながら、同時に低めの変化球という弱点を徹底的に攻められ、低打率に喘ぐ。この頃からタイガースファンは、「いつかきっと咲く花」と信じて見守って来た。
だが、なかなか咲かないのである。シビレを切らした首脳陣は外国人を補強し、桧山からレギュラーを剥奪しにかかった。しかし、なぜか競争相手が勝手にコケる。これを繰り返すうちに、次第次第に桧山の打撃も向上して来た。ああ、そうかコイツはライバルがいなきゃ伸びないんだ。首脳陣はだんだんサディスティックになって行く（笑）。そしてそれを見守るファンは、桧山への判官贔屓を強めていった。
そうこうしている間に、桧山は若手でも中堅でもなく、ベテランになっていた。かつてファンが描いていた「大輪の花」は未だに咲かせていないが、もはやそんなことは関係ない。「桧山を使ってやってくれ」「あいつはできる子なんや」そうやって桧山を応援できればそれでいいのだ（笑）。

今年はもう、厳しいなんてもんじゃない。昨年のスペンサーとの併用なんてかわいいものだ。かつて桧山にかけられたものの約１０倍の期待を背負った濱中と、図抜けた実力を持つ林が、熾烈な打撃勝負に加わってきた。いや、本当、厳しいなんてもんじゃない。だが、これで桧山の人気はますます燃え上がるのかも知れない。そして今年で３７歳の桧山はいつの間にかまた実力を上げるのかも知れない。


「６番スペンサーに代わりまして…桧山　バッターは桧山」
桧山が出てきた！嬉しい！がんばれ、桧山！
桧山に浴びせられる大声援。それを聞くだけで、なんともいえない幸福感を覚える。
いろいろと様変わりした阪神タイガースだが、桧山のまわりには、まだ古い阪神タイガースの匂いがちょっと残っているような気がするのだ。