自称阪神タイガース評論家（跡地）

横浜スタジアムの淡々とした負け試合は早々に終了する。まるでこの試合の存在意義は、「試合を終了させること」のみであったかのように。
一方、東京ドームの天下分け目の大一番は、猛烈な炎をあげながらなかなか終わろうとしない。こういう勝負をいつまでもやっていたい、選手たちの眼光が雄弁に物語る。言いようのない緊迫した試合だ。真剣での斬り合いだ。
客観的にその美しさに見とれながら、私の心に涌いてくるのは実に矮小な感情しかない。「嫉み」。わずか一週間前には、当事者としてこの炎の中にいることが当然だと思っていた。なのに今こうしてまるで異国の出来事のように、優勝争いを眺めなきゃいけない。受け入れがたかった。

9/22に完投勝利した野間口が中３日でリリーフ登板し、４回をピシャリ。高橋尚が初回に４点を失い、絶対的に不利な試合の流れを引き戻す。そして３本のＨＲでリードを奪い、上原に２回を締めさせる。この試合を含めて残り３試合、原ジャイアンツは「日本シリーズの戦い」をしている。強い。
一方残り８試合の落合ドラゴンズは、何があろうとも先発リリーフともローテーションを守り続ける。１４４試合鉄板の戦い。首脳陣は常に静かなる「指針」「規律」を守り続け、選手たちがその中で熱く燃える。最後の一つのアウトを取るまで、取られるまで、勝負はわからないということを熟知している。強い。
この２球団によるペナントレースはまだ余談を許さないと思う。

ジャイアンツの勝利で試合終了。これによりタイガースの優勝がなくなる。その現実を受け入れる準備はできていたようで、私にはそれほど強い思いが去来することはなかった。そのことがまた腹立たしい。喜びでも哀しみでもなく、嫉みとは…。


何の因果か野球ファンになり、何の因果かタイガースファンになる。そうなると、どうしても「タイガース生活習慣病」にかかり、タイガースと上手く付き合って行かなきゃいけない。私はそのために書いている。だから思ったことをバンバン書くのではなく、どう喜べば良いのか、どう悲しめば良いのかを考えて書くように心がけている。時には思ってないことも書くし、気になって仕方ないことをあえて書かないこともある。
この９連戦に入る前、なんてことはない２つの発言が気になってしょうがなかった。一つは岡田監督の談話。
『−−ヤクルトはグライシンガー、川島、石井一が先発しそう
「いややな」』
もう一つは矢野の言葉。
『ヤクルトも横浜も目標があいまいになっている。初戦を取れば流れがくる』（いずれも9/21サンスポより）
もちろん優勝戦線トップにいて、こっちも神経質だったというのはあるが、このなんてことない言葉がどうにもひっかかった。「いややな」はちょっと笑えるんだけどね（笑）。ウチらと同じレベルでモノを言うなっつうの。素直すぎ。試合結果までその「いや」な気持ちのままに出てしまったやんか。まったく無神経だよな。
矢野の方は相手に対する「不要な刺激」。結果この６試合が終わったところで、ウチの方がはるかに目標があいまいになってしまうという皮肉。青い鳥の話じゃないが、目標とはあらゆるところにあるものだ。

実際のところ、試合をしている両軍にこれらの発言が何か作用したかと言えば、おそらく何も関係はない。純粋に力がないから優勝できなかったのだとは思う。また、それ以外にも逆にネガティブな気分にさせる「お気楽報道」などはいくらでもあった。
だけど少なくともここに一人、おそらくはかなり多くのタイガースファン、野球ファン、あるいは両軍の関係者が、この２つの発言にひっかかりを持ったということ。
大切な時期、主要人物の言葉は不思議な力を持つもの。本当に気をつけて欲しいと思う。

タイガースの経営陣なら、絶対に２位を諦めるなというだろう。２位争いはズバリ大金の奪い合いだから。もちろん現場の首脳陣、選手も同じだろう。
ファンのうち、多くは日本一への準備だ！と無理矢理にでも気持ちを盛り上げ直していることだろう。
私は…なんだか良くわからない。初めてのことということもあって、次の物語の表紙をめくる気持ちになっていない。きっと少しだけ時間が必要なんだろうと思う。
それよりも、今はこの醜い「妬みの気持ち」を晴らしたい。ただそれだけだ。