自称阪神タイガース評論家（跡地）

今日もよろしくね、お願いだから（笑）。ということで本日、第３回自タオフ会。



６回ウラ、５回４失点のエース川上が降板し、左腕小笠原が上がる。この回先頭、下柳の代打に指名されたのは、二軍戦での「代打逆転サヨナラ満塁ＨＲ」を引っ提げて前日昇格の町田。ストレート、シュートを良いところに決められ簡単に追い込まれる。ここから３つ直球で押し込まれるが、なんとかファウルで付いていく。そして６球目、狙い澄ましたスローカーブ、町田はタイミングを外され、上体が流れかかるが、踏み込んだ左足の強靱な筋力で立て直し、しっかりとヘッドを返す。パワーが乗った打球は若々しく伸びる。「入れー」打球を見ながら絶叫する金本。願い通じて、白球は京セラＤ大阪の高いフェンスを越えた。
それにしても感心したのは、Tigers-aiの製作スタッフ。町田が打った瞬間に備えて、金本のアップを抜いていて、打った瞬間逃さずスイッチ。町田の一発が会心なら、カメラワーク、スイッチング技術もまた会心、グッジョブ！

これで５点目、５点差になった。満塁ＨＲでも追いつけない５点のリードを一応セーフティリードとする説もあるが、このたった１点がもたらしたのはそれだけのことではない。

町田がどんな野球人生を歩んできたかは知らなくても、大ベテランと呼ばれる年になっても、決して腐らず、若手の手本になるようなトレーニングを続けていることは誰もが知っている。怪我するから少しは手を抜けとコーチから言われても、なかなか納得しないような男であることを誰もが知っている。だから町田のＨＲは、ベンチにいるすべての者に、上を目指して二軍で努力しているすべての者に感動と希望を与える一発だった。努力している人は報われる、いやたとえ報われなくても、まわりのみんなが「報われて欲しい」と願っている。むしろそのことの方が重要で、尊いことなのではないだろうか。

広島カープでは金本と同期入団。町田がドラ１、金本は４位。「博士の愛した数式」の原作で、博士と家政婦母子が観戦した、９２年６月２日岡山県営球場Ｃ−Ｔ戦で金本は一軍デビュー、その翌日広島市民球場に移動した同カードで町田が一軍デビューした。どこかで何かが違っていれば、カープの不動のレギュラーとして野球人生を歩んできたかも知れない。だが、町田に与えられた生き方は、左右併用、代打の切り札というものだった。
若い頃から誰にも負けないハードトレーニングが有名。金本が超人的な成長曲線を描き続ける背景に、ライバル町田の存在があったことは想像に難くない。

カープにとっては貴重な「幹部候補生」で、どういう経緯でタイガースに金銭トレードされたのかは正直わからないが、若手重視のカープの戦力構想から外れていたのは間違いない。代打の切り札として期待された昨季、大半を二軍で過ごす。レフトポールの上空を越えた「幻の代打逆転サヨナラＨＲ」が、去年の町田を文字通り左右してしまった。

自分のことではあまり喜ばない金本が、これ以上ないという笑顔で町田を迎える。本当に心の底から沸き上がるような笑顔だった。１日違いのデビューから１４年余り、確かに二人が立っている場所はまったく違うところになってしまった。しかしそんなことはどうでも良いことなんだ。今、やれる限りのことをして、その結果を素直に受け入れれば良いんだ。何の含みもない町田と金本の笑顔に多くのことを感じた夜だった。