自称阪神タイガース評論家（跡地）

２９歳になる中村泰、三東、一つ下の能見、その一つ下の江草、その一つ下の筒井、一つ飛んで岩田、またひとつ飛んで一番下の小嶋は今年２２歳だ。
しかしよく考えてみると、ルーキーあり、未勝利投手あり、１勝投手あり…通年の実績という面でも、江草以外はまだしっかりと残していないのが現実。こっちも少しは頭を冷やして見ていかないといけないと思う。
といいながらも、他球団から見れば羨ましい限りの陣容であることは間違いない。特にルーキー小嶋が十分に抗争のレベルに達してることが、話を面白くしている。

小嶋の投球には独特のタイミングがある。新人合同自主トレの長距離走で他をまったく寄せ付けなかった足腰は、細いようでもしなやかで粘りのある筋肉が十分に付いている。下で粘って、小さいテイクバックは上体が捻りを初めてもまだ体に隠れて打者からは見えない。肩が回ってもヒジが畳まれているため手先やボールはいつまでも見えないだろう。粘って蓄えられたエネルギーが、リリースの瞬間にすっと抜けるようなイメージ。やわらかなヒジ使いの球抜きは、まるで何の力も入れずに弓矢を放つかのようである。ここまでの流れはあくまでもゆったりとしたリズムで、力感を感じさせない。
しかし強い足腰の筋力が伝えられた直球は、その視覚的イメージとはまったく違う切れと伸びを見せる。Ｈ和田との類似性を指摘されることが多いが、フォームの見た目と実際のボールの威力のギャップを利用できる投手のようだ。

そして存在自体が面白い。大学社会人からは「遅咲きの花」を獲ることの多いタイガースが、珍しく「モノが違う」という超エリートを囲い込んだ。高校進学時も引く手数多の中から、甲子園出場を経営戦略の中心に据えた新興校を選ぶ。もちろん超特別待遇だったろう。そこからどんな事情があったかは知らないが、タイガース逆指名が前提で大阪ガス入り。その歩みは計画的で、必要な時に必要な成果をあげて来たという感じ。周囲の喧噪に惑わされず、淡々と精進できる才能と冷静さを持っているのだろう。

その実力レベルを見極めることは大切だが、他の投手と迷うくらいなら、多少のリスクはとっても小嶋を「全員抜かし」でローテ入りさせて欲しいと思う。何かまるでそれが当然のことのように淡々と結果を出しそうな雰囲気を持っている。そして、そのことが悔しくてしょうがない男たちを大量に生み出し、闘争心をさらに燃え上がらせるような存在になれるような気がしてならない。そういう現在のタイガースに最も必要なものをもっていそうな気がするのだ。