2008.08.01 Friday
ところで何で藤川が8回で久保田が9回だったの?まあ、全体としてその方が面白く仕上がったと思うから良いんだけどね。
下柳が打たれて、でも矢野はとても幸せそうな顔をしていて、金本はホームラン競争で0本の格好悪さを本番でいきなり取り返して、あとちょっとでMVP、新井もちょっとは良くなっているようだし、タイガース勢はけっこう存在感があったね。良い方も悪い方も。
藤川も相変わらず全部速球でフライアウト3つだったしね。
藤川自身も強く思っていて、周囲も、ファンも思っていること。それは、
「でも、あの化け物みたいな藤川じゃないんだよなぁ」ってこと。
みんなわかっているんだよね。藤川のやるべきこととは、唯一「0点で試合を締めくくること」のみであって、そのために必要なことに万全を期して欲しいし、そのために不要なことに意識をとらわれるべきではないってね。みんなそれをわかっているから、結果を出し続ける藤川を賞賛し、さらに応援の拍手を送り続けているんだ。
そして、藤川が健康で、球界トップレベルの速球を投げ込み続けてくれることを嬉しく思っている。それがタイガースファンの嘘偽りない気持ちだ。
だからこそみんな慎重に言葉を選んでいるのだけれど、でもみんなの気持ちの中に「あの化け物が見たいなあ」という率直な気持ちがあるのもまた事実なのではないかと思う。
誰もが口にしていた、プロ野球選手が、まっすぐ一本に絞って待って、それでもなお空振りするだなんてあり得ないという言葉。あり得ないもの、本当に貴重なものを見ていたというのに、いつの間にか「それが当たり前」と思っていたんだよなぁ。
いやもちろんその時もそうは言っていた。藤川球児に皆が酔いしれるのは、それが永遠に続くものではないとわかっているからと。信じられない絶妙なバランスの上に成り立つものであって、刹那の美しさなのだと。
でも本当にそれを喪失する寂しさまではわかっていなかったんだな。だから今でも、いつまでも、あの化け物の球児が、すぐに帰って来てくれるに違いないと信じている。
その可能性がどれほどのものなのか、それは知るよしもない。とにかく誰もがあり得ないと言っていたことなんだから。
それでもできることなら、北京五輪の凄い場面で、いやクラシリや日本シリーズの物凄い場面で、「球児のまっすぐだ!化け物の球児だ!」と叫びたい。いやむしろ言葉を失いたい。
懸命にバランスを保ち続け、千々に乱れているであろう思いを抑え込みながら、一球一球放り込み続ける藤川球児を見て、そんなことを感じていた。