2010.04.14 Wednesday
どえらい試合のその陰で、関本平野の二塁守備にひとくさりしておきたい。競り合いになった後半6回スンヨプの遊ゴロで併殺を取れなかった関本のキレのなさ、大事には至らなかったが、決定的とも思われた追加点を奪われた7回二死阿部の二ゴロを内野安打にしてしまった関本のプレー、8回ウラ一二塁間良く捕ったがベースカバー久保田へ高投してしまった平野。このポジションは常にファインプレーが当たり前であって欲しいのだ。まあ、「大和使ってくれよ頭」が先にあるからそう見えるのは否定しないけどね。
序盤で大量リードを奪ったはずなのに、終わってみればひっくり返されている。やる側にまわるのは珍しいけれど、やられることはよくある(今年もすでにあった)ので、どんな具合にやられていくのか、やられる側の心理は良くわかっている。まずどこがやられるのかといえば、頭の中がやられるのだ。やばい、まずい、打たれそう、やっぱり打たれた、やばい、まずい、逆転されたらどうしよう、ああ、やばい…ここから先はあっという間だ。まだ何も終わっていないのに勝ったと思ってしまう心理、あれ?ひょっとして…という疑念、怖いと感じてしまう気持ち、ネガティブなイメージ、負ける時は頭の中から負けていく。
してみればこの試合、前の対戦で能見で先勝しながらGが連勝、しかも力負けの試合だったから、Gにしてみれば能見を後略した時点でほっとするのは良くわかる。足にハリがあるという小笠原を早々に引っ込めるのもわかる。でもそこらへんに初めの気持ちのひび割れが生まれる。まあ大丈夫だろう、まさかね…。タイガースにしてみれば軽くカチンと来るような交代。渡辺、メッセンジャーが自分の生きる場所、生きる道を作るための気迫ある投球。不調を極める鳥谷の良い当たりがスタンドまで届いて2ランHRになる。それまではタイガースもチャンスを掴みながらハードラックな打球で得点できなかった。今までの運の悪さを振り払うかのような、よしこれで鳥谷もチームも変われそうだと思わせる一発。しかしなんのことはない、スコアは6−2だ。ところがやられた方はそう思っていない。6点差もあったのに、大量リードだったのに、次また2ラン打たれたらもう2点差になってしまう…と、まだ打たれてもいない次のことまで計算してしまう。だから、この日打った5本のHRは、すべて価値の高いものばかりだったけれど、ゼロを2にした鳥谷の反撃の狼煙こそ、もっとも価値の高いものなのだと思う。乗って行けよ、トリ!
新井の3点目のHRも良いHR。インハイを詰まって打ったのが大きい。投手にしてみれば打たれないと思って投げた球。しかし新井の頭の中ではしっかり準備ができていて、思い取りに仕留めたHR。これをやられると投手は新井を怖がる。それが大事。
これで藤井を引きずり降ろし、まったく心の準備ができていない久保を引っ張り出す。もう頭の中は「やばいやばい」。城島にストレートの四球「やばいやばいやばいやばい…」。ブラゼル初球を狙い打ち、投げ損ないの高め変化球を無理矢理すくい上げる。高めをすくい上げるという信じられないような形でも彼のパワーをもってすればドームのスタンドには十分届く。
1点差は良いけれど、「HRばかり」と「5点止まり」が気になる。ましていやな松本、いやな足技で1点追加される。確かにこっちの頭の中にも「でも届かないのか」という考えが浮かぶ。でもこっちは気楽なもんだ。まあ6点負けていた試合だもんな、てなもん。
しかしリードを2点にしてもらった豊田の頭の中は、ぜんぜん「よしこれで行ける」にはなっていない。「こうなったら絶対勝たなきゃいけないじゃないか…失敗したらどうしよう、やばいやばい…」頭の中で自分の声がぐるぐる…。前回の対戦の時見た豊田は自信満々だった。直球、フォークとも恐ろしくコントロールが良かった。ところが精神状態が違えば、これだけ投球内容も違ってしまうんだなぁ。初球をフォーク待ちしていた新井に対し、真っ直ぐでストライクを取ったが、新井の打ちそうオーラを怖がるようにボールが続き四球。そうなると城島、ブラゼルを迎えて「ゲッツー取れる」よりも「一発なら同点」の声が強くなる。城島は打ち損じで右飛、ブラゼルは打球上がらず右前ヒットで一死一二塁。「一発で逆転…」頭の中の声が変わる。
「ゲッツーでチェンジ」というイメージを持ちながら桜井の打席を見ていても不思議ではないのに、「一発で逆転」というイメージしか浮かばなかった。それはきっと投げている豊田も、打席の桜井も同じだったのではないか。誰かに操られるように、豊田の初球フォークは、桜井が最も得意とする外よりやや高め、腕が伸びてリストが返って鋭角的に飛んでいくコースにすーっと引き込まれる。いったいこれは誰のイメージなのだろう。イメージ通りのスイング、イメージ通りの打球、思わず小声で「あ、行ったわ」と冷静に言ってしまうほど、イメージ通りのことが起きた。大逆転。ブラゼルが広大をグイッとハグして持ち上げたシーンはしばらく頭の中に残っていそうだ。
1点より2点。この日の仕上げは、マートンの右へ技ありの一発。ホームラン5本、それが得点のすべて。0−6ビハインドからの大逆転勝利。
KOされた能見の負けをみんなで消した。打ちも打ったりではあるけれど、逆襲を促し、逆転を信じて継投したリリーフ陣グッジョブ!マンガのような阪神タイガース。最高に面白かった。
巨人−阪神4回戦(2勝2敗、18時、東京ドーム、42096人)
阪 神 000 005 040―9
巨 人 213 000 100―7
【阪神】能見 渡辺 メッセンジャー 筒井 ○久保田(1勝1敗) S藤川球(4セーブ)
【巨人】藤井 久保 ●豊田(0勝1敗) 金刃
[本塁打]小笠原6号(巨) 亀井1号(巨) 鳥谷1号(神) 新井2号(神) ブラゼル6号(神) 桜井3号(神) マートン3号(神)
序盤で大量リードを奪ったはずなのに、終わってみればひっくり返されている。やる側にまわるのは珍しいけれど、やられることはよくある(今年もすでにあった)ので、どんな具合にやられていくのか、やられる側の心理は良くわかっている。まずどこがやられるのかといえば、頭の中がやられるのだ。やばい、まずい、打たれそう、やっぱり打たれた、やばい、まずい、逆転されたらどうしよう、ああ、やばい…ここから先はあっという間だ。まだ何も終わっていないのに勝ったと思ってしまう心理、あれ?ひょっとして…という疑念、怖いと感じてしまう気持ち、ネガティブなイメージ、負ける時は頭の中から負けていく。
してみればこの試合、前の対戦で能見で先勝しながらGが連勝、しかも力負けの試合だったから、Gにしてみれば能見を後略した時点でほっとするのは良くわかる。足にハリがあるという小笠原を早々に引っ込めるのもわかる。でもそこらへんに初めの気持ちのひび割れが生まれる。まあ大丈夫だろう、まさかね…。タイガースにしてみれば軽くカチンと来るような交代。渡辺、メッセンジャーが自分の生きる場所、生きる道を作るための気迫ある投球。不調を極める鳥谷の良い当たりがスタンドまで届いて2ランHRになる。それまではタイガースもチャンスを掴みながらハードラックな打球で得点できなかった。今までの運の悪さを振り払うかのような、よしこれで鳥谷もチームも変われそうだと思わせる一発。しかしなんのことはない、スコアは6−2だ。ところがやられた方はそう思っていない。6点差もあったのに、大量リードだったのに、次また2ラン打たれたらもう2点差になってしまう…と、まだ打たれてもいない次のことまで計算してしまう。だから、この日打った5本のHRは、すべて価値の高いものばかりだったけれど、ゼロを2にした鳥谷の反撃の狼煙こそ、もっとも価値の高いものなのだと思う。乗って行けよ、トリ!
新井の3点目のHRも良いHR。インハイを詰まって打ったのが大きい。投手にしてみれば打たれないと思って投げた球。しかし新井の頭の中ではしっかり準備ができていて、思い取りに仕留めたHR。これをやられると投手は新井を怖がる。それが大事。
これで藤井を引きずり降ろし、まったく心の準備ができていない久保を引っ張り出す。もう頭の中は「やばいやばい」。城島にストレートの四球「やばいやばいやばいやばい…」。ブラゼル初球を狙い打ち、投げ損ないの高め変化球を無理矢理すくい上げる。高めをすくい上げるという信じられないような形でも彼のパワーをもってすればドームのスタンドには十分届く。
1点差は良いけれど、「HRばかり」と「5点止まり」が気になる。ましていやな松本、いやな足技で1点追加される。確かにこっちの頭の中にも「でも届かないのか」という考えが浮かぶ。でもこっちは気楽なもんだ。まあ6点負けていた試合だもんな、てなもん。
しかしリードを2点にしてもらった豊田の頭の中は、ぜんぜん「よしこれで行ける」にはなっていない。「こうなったら絶対勝たなきゃいけないじゃないか…失敗したらどうしよう、やばいやばい…」頭の中で自分の声がぐるぐる…。前回の対戦の時見た豊田は自信満々だった。直球、フォークとも恐ろしくコントロールが良かった。ところが精神状態が違えば、これだけ投球内容も違ってしまうんだなぁ。初球をフォーク待ちしていた新井に対し、真っ直ぐでストライクを取ったが、新井の打ちそうオーラを怖がるようにボールが続き四球。そうなると城島、ブラゼルを迎えて「ゲッツー取れる」よりも「一発なら同点」の声が強くなる。城島は打ち損じで右飛、ブラゼルは打球上がらず右前ヒットで一死一二塁。「一発で逆転…」頭の中の声が変わる。
「ゲッツーでチェンジ」というイメージを持ちながら桜井の打席を見ていても不思議ではないのに、「一発で逆転」というイメージしか浮かばなかった。それはきっと投げている豊田も、打席の桜井も同じだったのではないか。誰かに操られるように、豊田の初球フォークは、桜井が最も得意とする外よりやや高め、腕が伸びてリストが返って鋭角的に飛んでいくコースにすーっと引き込まれる。いったいこれは誰のイメージなのだろう。イメージ通りのスイング、イメージ通りの打球、思わず小声で「あ、行ったわ」と冷静に言ってしまうほど、イメージ通りのことが起きた。大逆転。ブラゼルが広大をグイッとハグして持ち上げたシーンはしばらく頭の中に残っていそうだ。
1点より2点。この日の仕上げは、マートンの右へ技ありの一発。ホームラン5本、それが得点のすべて。0−6ビハインドからの大逆転勝利。
KOされた能見の負けをみんなで消した。打ちも打ったりではあるけれど、逆襲を促し、逆転を信じて継投したリリーフ陣グッジョブ!マンガのような阪神タイガース。最高に面白かった。