自称阪神タイガース評論家（跡地）

普通なら結びつかないであろう二つのニュースが、私の中で一つの考えになった。

それぞれに感想を言えば、「教育基本法」のように時代と合わない部分が多くなった法律を改めることは「是」だと思うが、「愛国心条項」には、率直に「わかってないな」と思う。また、低視聴率のため野球中継が削減されることに時代の変化と一抹の寂しさと、財政面の危機を深刻に感じるが、地上波放送の枠が「すべて」であるかのように、この現実を前にうろたえる人々を見ると「わかってないな」と思う。


テーマは、「愛するってなに？」だ。私は、五輪やＷ杯、ＷＢＣのように国の威信を賭けて行うスポーツの前ではバリバリの愛国者だ。しかし、例えば学生だったとして始業式の時に国旗に向かって、国歌斉唱なんてことになったら、まるでサヨクのように反発心をあらわにするかも知れない。「愛」は自分の中から湧き出すものであって、人から強制されたり、「であるべきだ」という理屈から育つ感情ではない。
私はスポーツが大好きだから、その大好きなもので日本が世界に誇れる存在になって欲しいと思う。いわゆる「愛国心」とは、自分の身近な好きなもの、好きなこと、好きな人を誇りたいという率直な気持ちが広がっていくものだと思う。それは、市民革命で平和な社会を勝ち取ったという歴史でも良いし、国民のことを愛し慈しんだ王様から来るものでも良いし、もちろん神秘に包まれた神話から続く皇室でもかまわない。良いもの、素晴らしいもの、愛すべきものと、自分自身で感じることが大切なのだ。

Ｇ戦の視聴率の低下も同じことだと思う。「愛されていないから見てもらえない」という事実を、どこまで真摯に受け止めているのか。読売関係者の一部はその本質をねじ曲げて捉えて、「見てくれれば愛してもらえる」と考えているのだと思う。

二つのニュースは、かつて「愛されていた」ものが、今「愛されていない」ということに対して、エラい人が大きな不満と焦りをもっているという点で共通している。その人たちは、「昔の価値観」にとらわれすぎていて、なんとかかつての姿をとり戻したい、そうあるべきだと思っているのも同じ。
そしてその人たちが「愛してもらおう」と動けば動くほど、余計に愛されなくなるという点も同じである。
「なぜ愛そうとしないのか？」「なぜ愛さないのか？」

違うね、違う。
まずあなたが愛していないんだよ。あなたが日本を、郷土を愛していない。町の人を愛していないし、隣人を愛していないし、家族を愛していない。言っている本人に、本当に愛しているというものが見えれば、そういう行動があれば、その気持ちは必ず伝わるし、その言葉にも真実が出てくる。
あなたがジャイアンツを、野球を愛していないんだ。ファンを愛していないし、選手を愛していない。そんなことは言葉の端々から見えるし、何より放送を見ればすぐにわかる。
だからそんなあなたたちから、いくら法律で縛り付けられようとも、いくら情報のシャワーを振りかけられようとも、人の心を動かせないのだ。

本当に愛するものがあって、その愛するもののために献身的な行動をしている人は、必ず他の人の心をも動かす。その姿に感動し、共感し、その愛しているものに興味を持ち、知らず知らず自分も愛するようになる。そんな経験を誰もがしているだろう。
結局つきつめると、愛することには理屈も理論もなく、ましてや法律や洗脳でどうにかなるものではない。愛してしまったから愛している、ただそれだけ。はじめは誰かが愛しているものを、いつのまにか自分も愛している、そんなもんなんだ。そしてその起源は、自分自身を信じて、自分を愛している人がいるってことなんだ。
愛される国にしよう。愛される野球であろう。