2007.07.15 Sunday
「チームがこんな状態で、痛い、かゆいはいってられない。でも、かゆいくらいは言わせて」(サンスポ)
彼が痛みを隠しきれないのだから、尋常なことではないとわかってはいたけど、いざそう言われると言葉もない。
なぜそんなことができるんだろうね。不思議でしょうがない。もう破られないような世界記録保持者なんだから、自分の記録のためだけならそこまで執着しないだろう。今オフの更改でゴールに相応しい契約もできた。お金のためなら、「長生き」を選ぶべきだ。広島生まれ広島育ちの金本にとって、阪神タイガースという球団が命を捧げるべき対象でもなかろう。「ファンのため」そんな抽象的な概念で力が湧くとも思えない。なぜ彼は日常生活すらままならない左ヒザを押して走るのか。
その答えを知っているのは金本だけだが、きっと真面目には答えないだろう。ただ彼は自分が何者であるかをよく知っている。勝負とあらば絶対に負けない、ましてや自分との勝負にだけは負けない、そう誓って戦い続けて来たこと、それをずっと続けてきたことで、今の自分がどういう位置にいて、どういう影響力を持っているかをよく知っている。
今季、金本は選手生命の危機に立たされていた。そう私は感じていた。打席から、自分との戦いに勝った者のオーラが出ていないと思っていた。
有望新人と呼ばれていなかった若手時代。他と比較して相応な対価を得られなかったカープ時代。お値段据え置きのタイガース時代。それらを経て、ようやく満願成就の報酬を得た。戦い続けたプロアスリートとして、一つの達成感を覚えるのは自然のことだ。「絶対に負けない。○○までは」の○○がまた一つ減ったのは間違いない。勝負を分けるのは研ぎ澄まされた「生き死に」の感覚。そこに鈍りが生じているのではないかと見ていた。
ひょっとしたら金本自身の中に「死」がなくなっていたのかも知れないなぁ、などと思う。こんな感じであと数年はやっていける。チームも急にガタガタする様子はないだろう。自分自身、先の不安も感じない。
ところがチームは急にガタが来た。自分の身にも想定外の激痛が降りかかった。そして金本はまだまだ負けを受け入れるわけにはいかなかった。動けるかどうか、走れるかどうかは、生き死にの勝負の場に身を置けるかどうか。金本の戦闘意欲がまた従来にも増して燃えさかっているのだと思う。
金本は、阪神タイガースというチームを変えた。痛い時、苦しい時こそ頑張るのだ。人の痛み、苦しみを助けることに生き甲斐を感じるのだ。己の体を張って、自らを犠牲にしてチームのためにつくすのだ。伝統として阪神タイガースに決定的に不足していた、これらの精神的骨格を築き上げた。
だがそれが新しい伝統になるにはまだ時間が足りていなかった。伝聞ではなく、直接新しい世代に受け継がれるチャンスがなかった。金本の激痛と引き替えではあるのだけれど、今こうして伝統が形成されようとしていることに喜びを感じる。
金本の教えその本質は、一つ一つ勝負の突端をおろそかにするなということ。この精神性は、その継続、蓄積によって強大なパワーを得る。これがタイガースの伝統として根を張ってくれることを強く願いたいのはもちろんのことだが、同時にそういうちっぽけなことだけにとどまって欲しくないとも思う。現代の偉人だよなぁ。
彼が痛みを隠しきれないのだから、尋常なことではないとわかってはいたけど、いざそう言われると言葉もない。
なぜそんなことができるんだろうね。不思議でしょうがない。もう破られないような世界記録保持者なんだから、自分の記録のためだけならそこまで執着しないだろう。今オフの更改でゴールに相応しい契約もできた。お金のためなら、「長生き」を選ぶべきだ。広島生まれ広島育ちの金本にとって、阪神タイガースという球団が命を捧げるべき対象でもなかろう。「ファンのため」そんな抽象的な概念で力が湧くとも思えない。なぜ彼は日常生活すらままならない左ヒザを押して走るのか。
その答えを知っているのは金本だけだが、きっと真面目には答えないだろう。ただ彼は自分が何者であるかをよく知っている。勝負とあらば絶対に負けない、ましてや自分との勝負にだけは負けない、そう誓って戦い続けて来たこと、それをずっと続けてきたことで、今の自分がどういう位置にいて、どういう影響力を持っているかをよく知っている。
今季、金本は選手生命の危機に立たされていた。そう私は感じていた。打席から、自分との戦いに勝った者のオーラが出ていないと思っていた。
有望新人と呼ばれていなかった若手時代。他と比較して相応な対価を得られなかったカープ時代。お値段据え置きのタイガース時代。それらを経て、ようやく満願成就の報酬を得た。戦い続けたプロアスリートとして、一つの達成感を覚えるのは自然のことだ。「絶対に負けない。○○までは」の○○がまた一つ減ったのは間違いない。勝負を分けるのは研ぎ澄まされた「生き死に」の感覚。そこに鈍りが生じているのではないかと見ていた。
ひょっとしたら金本自身の中に「死」がなくなっていたのかも知れないなぁ、などと思う。こんな感じであと数年はやっていける。チームも急にガタガタする様子はないだろう。自分自身、先の不安も感じない。
ところがチームは急にガタが来た。自分の身にも想定外の激痛が降りかかった。そして金本はまだまだ負けを受け入れるわけにはいかなかった。動けるかどうか、走れるかどうかは、生き死にの勝負の場に身を置けるかどうか。金本の戦闘意欲がまた従来にも増して燃えさかっているのだと思う。
金本は、阪神タイガースというチームを変えた。痛い時、苦しい時こそ頑張るのだ。人の痛み、苦しみを助けることに生き甲斐を感じるのだ。己の体を張って、自らを犠牲にしてチームのためにつくすのだ。伝統として阪神タイガースに決定的に不足していた、これらの精神的骨格を築き上げた。
だがそれが新しい伝統になるにはまだ時間が足りていなかった。伝聞ではなく、直接新しい世代に受け継がれるチャンスがなかった。金本の激痛と引き替えではあるのだけれど、今こうして伝統が形成されようとしていることに喜びを感じる。
金本の教えその本質は、一つ一つ勝負の突端をおろそかにするなということ。この精神性は、その継続、蓄積によって強大なパワーを得る。これがタイガースの伝統として根を張ってくれることを強く願いたいのはもちろんのことだが、同時にそういうちっぽけなことだけにとどまって欲しくないとも思う。現代の偉人だよなぁ。