2008.04.06 Sunday
試合時間はわずか2時間34分。5時間ゲームでもあっという間に感じるような試合もあるし、2時間半でも完全燃焼する熱い試合もある。イニング間や投手交代、作戦タイムなどでダラダラしないというムーブメントには基本大賛成の私だが、行き着くところ「時間短縮」が大事なのではなく、「どんな時間を見せるか」が大事なのだろう。
毎日毎日同じ事を言うが、毎日同じ事を感じさせるのだから仕方ない。守備と走塁はなんて大切なんだろう。
言外にあるのは、もっとも大事なのは投げることと打つことであるという真実。これは間違いのないこと。
言語活動(言葉を操ってコミュニケーションをとること)にたとえて見る。「投打が大事」、これって言語活動で言えば、「単語力、熟語力が大事だ」に近い。名詞や動詞をたくさん知っていて、それを使いこなせれば、伝達は確実なものになる。
一方「守備走塁が大事」は、「挨拶と表情が大事だ」に近い。伝達そのものを補う、下地を作ろうということだ。
守備と走塁は、試合の下地を作る。投手が抑えるための下地を作り、攻撃時に得点をあげる下地を作る。「リズム」、「流れ」というのも同義だと思う。
岩田対グライシンガー。攻撃のチャンスは多くない。流れを持って行かれると、経験のない岩田には大崩れの危険もある。タイガースにとってはタフな試合だ。
3回までは両投手が素晴らしい立ち上がりを見せる。グライシンガーはいつも通り直球が走り、チェンジアップが良く落ち、スライダー、カットボールが切れる。
岩田も直球に力があり、スライダーはブレーキが鋭かった。双方とも直球と変化球のどちらが来るのかわからないという投げ方に武器がある。
下地作りの始まりはこの日も金本のダッシュから。4回表一死一塁にヒットの平野、金本はチェンジアップに泳がされショートゴロゲッツーコース、しかしこの男はめったなことじゃ併殺を食わない。全力疾走で間一髪一塁セーフ。続く今岡が平凡な二ゴロに終わったことで、なおのことピリピリムードがチームに生まれる。集中が高まる。
5回表、先頭鳥谷が四球。珍しくグライシンガーが制球を乱す。鳥谷の構えに「どこに投げても打たれそう」という恐怖感を覚えたのだろうと思う。
続くフォードへの初球、鳥谷がスタート、ファール。ボールが2つ続いて1−2から再び鳥谷がスタート、フォードこれもファール。2−2となって5球目、また鳥谷がスタート、外角低めに落ちていくチェンジアップにフォードなんとか食らいつきショート左へ、逆を取られたショート坂本のグラブの先を打球が抜ける、鳥谷が3塁を陥れるのをレフトラミレスはただ見送るしかなかった。
無死一三塁となって野口。チャンスと言っても次の打順は好投の岩田。野口でなんとかしたい。2−2からスライダーを押っつけた打球はライトへ浅いファールフライ。高橋由が走りながらキャッチ、鳥谷スタート、崩れた体勢を懸命に立て直しながらバックホーム、ファースト李が中継してホームに転送したが鳥谷ホームイン。
高橋が捕球後ローリングターンからダイレクト返球をしていれば刺せたかも知れないが、和田コーチはそんな好プレーが生まれる可能性は低いと読み切っていたのだろうと思う。それはここまでのチームの勝ち負けの差、勢いの差もあっただろうし、走塁で下地を作っていることの差もあっただろう。たった一つの四球から、ヒットコースをこじ開けて、足でもぎ取った先取点。素晴らしすぎない?
野口と岩田のコンビは息が合うようだ。自分に厳しいストイックな岩田に、大丈夫だお前の球なら打てるはずがないと、ミットを見つめさせる野口。技術よりも気持ちと勢いで押していける投手を任せると野口の味が出る。
表に点が入ると、不思議なもんで試合が動く。振り子は左右に振れるのだ。5回のウラ、先頭李の打球は鋭くセカンドの左を破るに決まっていた。ところがこれを平野が追って横っ飛び、グラブに入れると、起きあがる間もなく一塁へ送球、アウトにするスーパープレー!当たり前のように振れるはずの振り子を力ずくで止める。岩田が心を乱さずに抑えていく下地となるビッグプレーだった。
二死を取った後、キムタクにストレートの四球。もう1勝したのだし、勝利投手の権利なんて考えるような試合じゃないのだが、下位打線で「勝ち」を焦る。続く坂本でエンドランを決められて二死一三塁。原監督はグライシンガーをそのまま打席に送る。試合後の談話で「あそこでは代えられない。あそこで代えてしまってはいろんことがバラバラになる」というようなことを言っていたとのことだが、その通りだと思う。たとえここで代打を出して2点を奪ったとして、その後のリリーフで試合を勝利に導ける可能性はグライシンガー続投より遙かに低いだろうし、今後のグライシンガーの心理に大きな悪影響を与える。リリーフが失敗しようものなら、先発とリリーフ、野手と投手、選手と首脳陣など、チーム内のありとあらゆるところに不信感が生まれる。そんなリスクを背負うような場面ではない。
岩田はここを切り抜け中盤の軽い山を越える。
原監督として、長い先を考えれば当然の策ではあるが、同時にこの試合においてはどうしても流れを相手に渡すことになる。6回表、先頭の平野が三前ボテボテ、ヘッドスライディング内野安打。ミスター下地。
明かな不調に入ってしまった新井は2−2から空振り三振、ここで平野はスタートを切っており盗塁は成功、一死二塁。空振りが相当な確立で予想できる中のスタートだから、単独盗塁と同じ感覚で走っている。頼もしい。
金本。金本にとっては打ちにくい投手だ。直球はコーナーでストライクを取ってくる。チェンジアップは絶妙のコースに逃げていく。初球、インロー直球ボール。打ってもファールの球。2球目ど真ん中に見えて外角低めに決まるチェンジアップ見逃し、振っても空振りの球、1−1。3球目阿部の構えはインロー直球、ストライクを取る球、打ってもファーストゴロになる球。ところが1試合の内にいくつもない大失投がここで来る。直球はすーっとど真ん中へ、左足首で地面を支え、頭は残したまま、膝から腰にかけては前に送り込まれる、体で作った弓の真ん中を矢のようにバットが走る。その一瞬の出来事の後に、ボールは一直線にライトスタンドに消えている。恐ろしい打者だ。武者だ。
なぜグライシンガーが失投をしたのか。走者二塁で最強打者というプレッシャーだろう。平野の下地作りは限りなく大きい。
3−0となり、8回ウラには連打で無死二三塁のピンチを迎えるが、慌てることなく一つ一つアウトを重ねた。ここを1失点に凌いで、後をを藤川に任せる。もちろん藤川も慎重に1回をまとめた。
思えば先発が8回&クローザーが1回なんていう継投は実に久しぶりの気がする。というか前回の記憶がない(笑)。去年、完投は3つほどあったが、このパターンあっただろうか。
8回1失点、被安打4、与えた四死球は2。野手と一緒にグライシンガーを退けた岩田の2勝目、ものすごくでっかい勝利だと思う。勝負を決めた金本も凄かった。だけど勝つ下地を作った選手たちがいたからこそなんだよね。本当に良い勝利だったよ!
毎日毎日同じ事を言うが、毎日同じ事を感じさせるのだから仕方ない。守備と走塁はなんて大切なんだろう。
言外にあるのは、もっとも大事なのは投げることと打つことであるという真実。これは間違いのないこと。
言語活動(言葉を操ってコミュニケーションをとること)にたとえて見る。「投打が大事」、これって言語活動で言えば、「単語力、熟語力が大事だ」に近い。名詞や動詞をたくさん知っていて、それを使いこなせれば、伝達は確実なものになる。
一方「守備走塁が大事」は、「挨拶と表情が大事だ」に近い。伝達そのものを補う、下地を作ろうということだ。
守備と走塁は、試合の下地を作る。投手が抑えるための下地を作り、攻撃時に得点をあげる下地を作る。「リズム」、「流れ」というのも同義だと思う。
岩田対グライシンガー。攻撃のチャンスは多くない。流れを持って行かれると、経験のない岩田には大崩れの危険もある。タイガースにとってはタフな試合だ。
3回までは両投手が素晴らしい立ち上がりを見せる。グライシンガーはいつも通り直球が走り、チェンジアップが良く落ち、スライダー、カットボールが切れる。
岩田も直球に力があり、スライダーはブレーキが鋭かった。双方とも直球と変化球のどちらが来るのかわからないという投げ方に武器がある。
下地作りの始まりはこの日も金本のダッシュから。4回表一死一塁にヒットの平野、金本はチェンジアップに泳がされショートゴロゲッツーコース、しかしこの男はめったなことじゃ併殺を食わない。全力疾走で間一髪一塁セーフ。続く今岡が平凡な二ゴロに終わったことで、なおのことピリピリムードがチームに生まれる。集中が高まる。
5回表、先頭鳥谷が四球。珍しくグライシンガーが制球を乱す。鳥谷の構えに「どこに投げても打たれそう」という恐怖感を覚えたのだろうと思う。
続くフォードへの初球、鳥谷がスタート、ファール。ボールが2つ続いて1−2から再び鳥谷がスタート、フォードこれもファール。2−2となって5球目、また鳥谷がスタート、外角低めに落ちていくチェンジアップにフォードなんとか食らいつきショート左へ、逆を取られたショート坂本のグラブの先を打球が抜ける、鳥谷が3塁を陥れるのをレフトラミレスはただ見送るしかなかった。
無死一三塁となって野口。チャンスと言っても次の打順は好投の岩田。野口でなんとかしたい。2−2からスライダーを押っつけた打球はライトへ浅いファールフライ。高橋由が走りながらキャッチ、鳥谷スタート、崩れた体勢を懸命に立て直しながらバックホーム、ファースト李が中継してホームに転送したが鳥谷ホームイン。
高橋が捕球後ローリングターンからダイレクト返球をしていれば刺せたかも知れないが、和田コーチはそんな好プレーが生まれる可能性は低いと読み切っていたのだろうと思う。それはここまでのチームの勝ち負けの差、勢いの差もあっただろうし、走塁で下地を作っていることの差もあっただろう。たった一つの四球から、ヒットコースをこじ開けて、足でもぎ取った先取点。素晴らしすぎない?
野口と岩田のコンビは息が合うようだ。自分に厳しいストイックな岩田に、大丈夫だお前の球なら打てるはずがないと、ミットを見つめさせる野口。技術よりも気持ちと勢いで押していける投手を任せると野口の味が出る。
表に点が入ると、不思議なもんで試合が動く。振り子は左右に振れるのだ。5回のウラ、先頭李の打球は鋭くセカンドの左を破るに決まっていた。ところがこれを平野が追って横っ飛び、グラブに入れると、起きあがる間もなく一塁へ送球、アウトにするスーパープレー!当たり前のように振れるはずの振り子を力ずくで止める。岩田が心を乱さずに抑えていく下地となるビッグプレーだった。
二死を取った後、キムタクにストレートの四球。もう1勝したのだし、勝利投手の権利なんて考えるような試合じゃないのだが、下位打線で「勝ち」を焦る。続く坂本でエンドランを決められて二死一三塁。原監督はグライシンガーをそのまま打席に送る。試合後の談話で「あそこでは代えられない。あそこで代えてしまってはいろんことがバラバラになる」というようなことを言っていたとのことだが、その通りだと思う。たとえここで代打を出して2点を奪ったとして、その後のリリーフで試合を勝利に導ける可能性はグライシンガー続投より遙かに低いだろうし、今後のグライシンガーの心理に大きな悪影響を与える。リリーフが失敗しようものなら、先発とリリーフ、野手と投手、選手と首脳陣など、チーム内のありとあらゆるところに不信感が生まれる。そんなリスクを背負うような場面ではない。
岩田はここを切り抜け中盤の軽い山を越える。
原監督として、長い先を考えれば当然の策ではあるが、同時にこの試合においてはどうしても流れを相手に渡すことになる。6回表、先頭の平野が三前ボテボテ、ヘッドスライディング内野安打。ミスター下地。
明かな不調に入ってしまった新井は2−2から空振り三振、ここで平野はスタートを切っており盗塁は成功、一死二塁。空振りが相当な確立で予想できる中のスタートだから、単独盗塁と同じ感覚で走っている。頼もしい。
金本。金本にとっては打ちにくい投手だ。直球はコーナーでストライクを取ってくる。チェンジアップは絶妙のコースに逃げていく。初球、インロー直球ボール。打ってもファールの球。2球目ど真ん中に見えて外角低めに決まるチェンジアップ見逃し、振っても空振りの球、1−1。3球目阿部の構えはインロー直球、ストライクを取る球、打ってもファーストゴロになる球。ところが1試合の内にいくつもない大失投がここで来る。直球はすーっとど真ん中へ、左足首で地面を支え、頭は残したまま、膝から腰にかけては前に送り込まれる、体で作った弓の真ん中を矢のようにバットが走る。その一瞬の出来事の後に、ボールは一直線にライトスタンドに消えている。恐ろしい打者だ。武者だ。
なぜグライシンガーが失投をしたのか。走者二塁で最強打者というプレッシャーだろう。平野の下地作りは限りなく大きい。
3−0となり、8回ウラには連打で無死二三塁のピンチを迎えるが、慌てることなく一つ一つアウトを重ねた。ここを1失点に凌いで、後をを藤川に任せる。もちろん藤川も慎重に1回をまとめた。
思えば先発が8回&クローザーが1回なんていう継投は実に久しぶりの気がする。というか前回の記憶がない(笑)。去年、完投は3つほどあったが、このパターンあっただろうか。
8回1失点、被安打4、与えた四死球は2。野手と一緒にグライシンガーを退けた岩田の2勝目、ものすごくでっかい勝利だと思う。勝負を決めた金本も凄かった。だけど勝つ下地を作った選手たちがいたからこそなんだよね。本当に良い勝利だったよ!