2008.07.08 Tuesday
オールスター最終投票結果発表(NPB公式)。ちょうど投票期間中に不調だったせいもあるのか、数字を残している鳥谷がちょっと低すぎる。ま、トリは偉大さがわかりにくい選手だから仕方ないか。
では昨日のつづき。
併殺で手放した流れを、併殺の取り損ねで完全に渡してしまい、引き離して試合を決めるはずが同点に持ち込まれる。象徴的な6回の表ウラだった。
7回は山北から吉原にスイッチ。吉原は無失点を続ける急成長のセットアッパーらしく、緩急と丁寧なコーナーワークで赤星、関本、新井と好打順のタイガースを簡単に退ける。
しかし4−4同点で回は7回、JFKを擁するタイガースなら、この接戦だって勝ちパターンでしかない…と言いたいところだが、今日はそうじゃないかも知れない。そう誰もが感じていた。何かちょっとずつ違っている。キター!と思っても来てない。狂い始めている。
7回ウラは久保田。一死後、投手の吉原に不運なヒットを許してしまう。しかし小関の送りバントを見事なフィールディングで二塁封殺する久保田、かっこいい!このプレーでちょっと押され気味の状況から戻した。
8回表、吉原続投。先頭金本、難しい変化球を軽くライト前に運んで出塁。去年までのどこをどうやっても点が取れなかった打線なら、自分が決めなきゃと力みかえっていただろうが、今年の金本は状況に応じて、出る打席、繋ぐ打席、決める打席を使い分ける。林の打席ではランエンドヒット、一ゴロで一死二塁。こういう約束事のプレーをそつなくこなしていることも去年との大きな違い。サインの出ている回数自体も全然違う。
打者鳥谷。こういう時、けっこう鳥谷に投げにくそうにする投手は多い。ここも警戒して四球、一死一二塁で久保田の打順、代打は桧山。なんと美しく予定通りにことがはこぶことか!ところがここは吉原が「ハマの新セットアッパー」の意地を見せ、気迫のボールで桧山を6−4−3の併殺に仕留める。この日3つ目の併殺。絶好調、タイガース打線は併殺の数、三振の数でもリーグトップ。これはずば抜けた打撃成績の副作用ととらえるべき。しかしこの試合のキモで2併殺はさすがに堪えた。
8回ウラ、ジェフ・ウィリアムス。狙ったコーナーに球が行かず、カウント球、勝負球がことごとく甘くなる。内川、村田、ビグビーと当たりの出ている中軸に対して、矢野はなぜかスライダーを混ぜず、直球で押しまくり、そして打たれた。内川、村田ともど真ん中の直球をレフト前にクリーンヒット。左のビグビーも外直球を上手く合わせてタイムリー二塁打、4−5となってなお無死二三塁。石川をなんとか三振に取るも、大西には低めをすくい上げられてレフトオーバー、フェンス直撃の2点タイムリー二塁打、4−7。決定的な追加点を入れられてしまう。結局ジェフは1回打者8人、4安打3失点の炎上。去年ことごとく「なんとかなった」同点でもJFKなら負けることはないという考え方が成り立たない。去年はどうやっても1点が遠かった。今年は1点は簡単に取るが、その分リリーフ陣の鉄壁さは弱まっている。個々の投手のコンディションや力もあるかもしれないが、人間のやっていることだ。どこか精神的な部分に違いがあるようにも思える。
こうなれば9回表は「ハマの新クローザー」寺原登場。この日記念すべきHRを打ったバルディリスとしてみれば、できれば勝ちゲームで飾りたかっただろう。しかし寺原の高速スライダーにまったく対応できず空振り三振。ほろ苦い初HRの日になっちゃったね。
一死、矢野。ハマスタ大好き、連日のヒーロー。代打葛城の代打で出た6回の併殺、狙って振った結果だから仕方ない。でもここは気合いを見せていた。カーブをとらえて投手返しのセンター前ヒットで出塁。一死一塁、簡単には終わらないんだから。
ところが赤星は初球のスライダーを打って二ゴロ、4−6と渡ってこれで二死一塁。3点差、さすがに今日は厳しい。まあ、しかしこれも良い教訓だ。休み前の総力戦だなんだと言ったって、要するにWJFKに頼るという意味じゃないか。そういう考えよりも、救援投手たちに楽をさせようとチームがまとまった時の方が強いじゃないか。大きな貯金を力に、若い先発投手を育てる。「ここはオレ」そういうプライドを刺激しながら、控え選手にも活躍の場を与え、育てる。これが今のタイガースを作ってきた姿勢だ。そして一人一人が自分の持ち場で、工夫してベストを尽くす。その積み重ねで大きな流れを作って来たんじゃないか。そんな反省を月曜休みを挟んでできるんだから良かった。そう前向きに考えよう。
二死一塁、関本。初球、138km/hスライダー、寺原切れよく外の良いコースに決める。2球目、152km/h直球これも外に決まる2−0、抜群の制球であっという間に追い込まれた。3球目の152km/h直球は外に大きく外れる。ちょっと力が入ったか。
ローテの一角としてスタートした寺原だが、好投報われず中盤で打ち込まれるという試合が多かった。あてにしていた外国人投手が使えず、チーム事情によりクローザーに配置転換。しかし大不振を極めるチームにあって、活躍の場が極端に少ない。4日ぶりのセーブチャンスに腕が鳴ったことだろう。
4球目、144km/hスライダー外いっぱいのところ、関本ファールで逃げる。打席の関本も必死だった。渡辺が2失点した6回ウラ、あの平凡な6−4−3を普通に処理していればこの試合は落とすことはなかった。関本はそう考えていたはず。
5球目、146km/hスライダー外低めにかかる。関本よく見てボール、2−2。直球とスライダーに球速の差はないが、間近に来てからスッと小さく曲がる高速スライダーは手強い球だ。
6球目、抜けたような遅い球が真ん中高めへ、関本この126km/hのカーブをなんとか踏みとどまって一塁側にファール。詰まり打ちタイプの関本だからこらえられた。前に崩されていたらファールにするのも難しかっただろう。
7球目、141km/hスライダーが外低めに外れてカウントは2−3。3点差、二死とはいえ走者二人で新井金本に回せば面白い。いやもうこの時すでに、この試合ひょっとして…そういう予感めいたものが球場のそこここに芽生え始めていたのかも知れない。粘りとは恐ろしい力だ。
8球目、152km/h直球、寺原は捕手の要求通り真ん中低めに叩き込むが、関本一塁側にファール。どれだけ活躍しても関本には危機感がある。関本を含め、1年でここまでチームを激変させたキーパーソンの一人、平野の復帰が近い。平野の離脱を補って余りある活躍をした関本だが、「大きいものを小さくしている」性質上、ホンモノのチョロチョロ系には俊敏さでかなわない。それを補うべく便利屋稼業を極めてはいるが、それが器用貧乏になってしまっていた経緯もある。
9球目、捕手相川のミットは前と同じ真ん中低めへ、しかし寺原が投じた152km/hの直球はまさしくど真ん中へ。関本鋭く腰を切ってこの絶好球を捉えると打球は左中間を越えていく。自動スタートの一走赤星が帰り5−7、関本タイムリー二塁打!
塁上の関本はまだ仕事が足りないという顔をしていたが、状態の良いクローザー寺原へ強烈なボディブローを叩き込んだ大仕事だった。
2点差となって二死二塁、打者新井。バッテリーの脳裏にこの試合、絶対に負けたくない、そういう気持ちが沸き起こるのは無理もない。しかし「もしここで新井の一発が出れば同点」という言葉にとらわれすぎた。ここは新井に繋がれる方がよっぽど困るのだ。しかも新井は繋ぐことを考えている。外一辺倒で逃げたバッテリーは無理もないとは思うが、弱かった。4球外スラが続いてカウント2−2、5球目アウトローに構える相川のミットが真ん中高めに動き、153km/hの速球が吸い込まれる、振り遅れた新井のバットはしかしパワーで負けることはない。打球はライト線を沿うようなライナーとなってあっという間にフェンスに届く。関本ホームイン、連続タイムリー二塁打!6−7、1点差でなお二死二塁!
大矢監督が相川を呼び打ち合わせ。聞くところでは、金本と勝負しろ、そう強気を喚起したという。結果的にその判断は間違っていた。たとえ金本敬遠後に林が逆転打を打ったとしても、それでもここで金本と勝負はあり得なかった、金本の打席を見終えた後、大矢監督はそう思っただろう。
初球、内角スライダー、外すつもりだっただろうが大きく外れる。この時点で金本は次の球が何で、自分はそれをどう打って、その打球がどうなって、その結果球場がどうなるのか、すべてわかっていたのではないだろうか。
2球目、外角低め相川のミット、そこへ目がけて152km/hの素晴らしい直球が伸びていく。角度を合わせてインパクト、左足を強く蹴り込む、ファールにすることは許されない、重心は左に残して、腰のひねりはゆっくり、手首をこねない、ヘッドを返しすぎないパンチショット、カンペキ!前進守備のレフトバック、頭は越える…フェンスまでは行く…入ったあああ!逆転2ラン!8−7!
一塁ベースを回って小さく拳を握って優しい笑顔の金本。興奮ではなく、ホッとしたような表情にも見える。やっぱりすべてわかっていたことだったんだね。
最終回、藤川球児が3人で締める。打ち取られた仁志が、内川が、村田が、そして一塁側のベンチに流れる時間がいちいち流れたり止まったりする。恐ろしい試合だった。選手だけではなく、斉藤投手コーチまで自分を取り戻す時間を必要としていた。
黄色い花が軽やかに風に揺れ、ブルーが深海に沈んでいった。
勝負とはなんと厳しいものなのだろう。その勝ちと負けの間にあるほんの些細なものがどれだけ大切なのか。職に軽重はあれど大小はなし。貴賤はなし。
失敗はある。それによってチームにダメージを与えてしまうこともある。それを取り返すべく自らが忠実に丁寧に自分の職責を全うすることで、チーム全体でそれを修復させる力が働き、大きな流れを作る。タイガースクルーの信じられない働きぶりに敬服するばかりだった。
併殺で手放した流れを、併殺の取り損ねで完全に渡してしまい、引き離して試合を決めるはずが同点に持ち込まれる。象徴的な6回の表ウラだった。
7回は山北から吉原にスイッチ。吉原は無失点を続ける急成長のセットアッパーらしく、緩急と丁寧なコーナーワークで赤星、関本、新井と好打順のタイガースを簡単に退ける。
しかし4−4同点で回は7回、JFKを擁するタイガースなら、この接戦だって勝ちパターンでしかない…と言いたいところだが、今日はそうじゃないかも知れない。そう誰もが感じていた。何かちょっとずつ違っている。キター!と思っても来てない。狂い始めている。
7回ウラは久保田。一死後、投手の吉原に不運なヒットを許してしまう。しかし小関の送りバントを見事なフィールディングで二塁封殺する久保田、かっこいい!このプレーでちょっと押され気味の状況から戻した。
8回表、吉原続投。先頭金本、難しい変化球を軽くライト前に運んで出塁。去年までのどこをどうやっても点が取れなかった打線なら、自分が決めなきゃと力みかえっていただろうが、今年の金本は状況に応じて、出る打席、繋ぐ打席、決める打席を使い分ける。林の打席ではランエンドヒット、一ゴロで一死二塁。こういう約束事のプレーをそつなくこなしていることも去年との大きな違い。サインの出ている回数自体も全然違う。
打者鳥谷。こういう時、けっこう鳥谷に投げにくそうにする投手は多い。ここも警戒して四球、一死一二塁で久保田の打順、代打は桧山。なんと美しく予定通りにことがはこぶことか!ところがここは吉原が「ハマの新セットアッパー」の意地を見せ、気迫のボールで桧山を6−4−3の併殺に仕留める。この日3つ目の併殺。絶好調、タイガース打線は併殺の数、三振の数でもリーグトップ。これはずば抜けた打撃成績の副作用ととらえるべき。しかしこの試合のキモで2併殺はさすがに堪えた。
8回ウラ、ジェフ・ウィリアムス。狙ったコーナーに球が行かず、カウント球、勝負球がことごとく甘くなる。内川、村田、ビグビーと当たりの出ている中軸に対して、矢野はなぜかスライダーを混ぜず、直球で押しまくり、そして打たれた。内川、村田ともど真ん中の直球をレフト前にクリーンヒット。左のビグビーも外直球を上手く合わせてタイムリー二塁打、4−5となってなお無死二三塁。石川をなんとか三振に取るも、大西には低めをすくい上げられてレフトオーバー、フェンス直撃の2点タイムリー二塁打、4−7。決定的な追加点を入れられてしまう。結局ジェフは1回打者8人、4安打3失点の炎上。去年ことごとく「なんとかなった」同点でもJFKなら負けることはないという考え方が成り立たない。去年はどうやっても1点が遠かった。今年は1点は簡単に取るが、その分リリーフ陣の鉄壁さは弱まっている。個々の投手のコンディションや力もあるかもしれないが、人間のやっていることだ。どこか精神的な部分に違いがあるようにも思える。
こうなれば9回表は「ハマの新クローザー」寺原登場。この日記念すべきHRを打ったバルディリスとしてみれば、できれば勝ちゲームで飾りたかっただろう。しかし寺原の高速スライダーにまったく対応できず空振り三振。ほろ苦い初HRの日になっちゃったね。
一死、矢野。ハマスタ大好き、連日のヒーロー。代打葛城の代打で出た6回の併殺、狙って振った結果だから仕方ない。でもここは気合いを見せていた。カーブをとらえて投手返しのセンター前ヒットで出塁。一死一塁、簡単には終わらないんだから。
ところが赤星は初球のスライダーを打って二ゴロ、4−6と渡ってこれで二死一塁。3点差、さすがに今日は厳しい。まあ、しかしこれも良い教訓だ。休み前の総力戦だなんだと言ったって、要するにWJFKに頼るという意味じゃないか。そういう考えよりも、救援投手たちに楽をさせようとチームがまとまった時の方が強いじゃないか。大きな貯金を力に、若い先発投手を育てる。「ここはオレ」そういうプライドを刺激しながら、控え選手にも活躍の場を与え、育てる。これが今のタイガースを作ってきた姿勢だ。そして一人一人が自分の持ち場で、工夫してベストを尽くす。その積み重ねで大きな流れを作って来たんじゃないか。そんな反省を月曜休みを挟んでできるんだから良かった。そう前向きに考えよう。
二死一塁、関本。初球、138km/hスライダー、寺原切れよく外の良いコースに決める。2球目、152km/h直球これも外に決まる2−0、抜群の制球であっという間に追い込まれた。3球目の152km/h直球は外に大きく外れる。ちょっと力が入ったか。
ローテの一角としてスタートした寺原だが、好投報われず中盤で打ち込まれるという試合が多かった。あてにしていた外国人投手が使えず、チーム事情によりクローザーに配置転換。しかし大不振を極めるチームにあって、活躍の場が極端に少ない。4日ぶりのセーブチャンスに腕が鳴ったことだろう。
4球目、144km/hスライダー外いっぱいのところ、関本ファールで逃げる。打席の関本も必死だった。渡辺が2失点した6回ウラ、あの平凡な6−4−3を普通に処理していればこの試合は落とすことはなかった。関本はそう考えていたはず。
5球目、146km/hスライダー外低めにかかる。関本よく見てボール、2−2。直球とスライダーに球速の差はないが、間近に来てからスッと小さく曲がる高速スライダーは手強い球だ。
6球目、抜けたような遅い球が真ん中高めへ、関本この126km/hのカーブをなんとか踏みとどまって一塁側にファール。詰まり打ちタイプの関本だからこらえられた。前に崩されていたらファールにするのも難しかっただろう。
7球目、141km/hスライダーが外低めに外れてカウントは2−3。3点差、二死とはいえ走者二人で新井金本に回せば面白い。いやもうこの時すでに、この試合ひょっとして…そういう予感めいたものが球場のそこここに芽生え始めていたのかも知れない。粘りとは恐ろしい力だ。
8球目、152km/h直球、寺原は捕手の要求通り真ん中低めに叩き込むが、関本一塁側にファール。どれだけ活躍しても関本には危機感がある。関本を含め、1年でここまでチームを激変させたキーパーソンの一人、平野の復帰が近い。平野の離脱を補って余りある活躍をした関本だが、「大きいものを小さくしている」性質上、ホンモノのチョロチョロ系には俊敏さでかなわない。それを補うべく便利屋稼業を極めてはいるが、それが器用貧乏になってしまっていた経緯もある。
9球目、捕手相川のミットは前と同じ真ん中低めへ、しかし寺原が投じた152km/hの直球はまさしくど真ん中へ。関本鋭く腰を切ってこの絶好球を捉えると打球は左中間を越えていく。自動スタートの一走赤星が帰り5−7、関本タイムリー二塁打!
塁上の関本はまだ仕事が足りないという顔をしていたが、状態の良いクローザー寺原へ強烈なボディブローを叩き込んだ大仕事だった。
2点差となって二死二塁、打者新井。バッテリーの脳裏にこの試合、絶対に負けたくない、そういう気持ちが沸き起こるのは無理もない。しかし「もしここで新井の一発が出れば同点」という言葉にとらわれすぎた。ここは新井に繋がれる方がよっぽど困るのだ。しかも新井は繋ぐことを考えている。外一辺倒で逃げたバッテリーは無理もないとは思うが、弱かった。4球外スラが続いてカウント2−2、5球目アウトローに構える相川のミットが真ん中高めに動き、153km/hの速球が吸い込まれる、振り遅れた新井のバットはしかしパワーで負けることはない。打球はライト線を沿うようなライナーとなってあっという間にフェンスに届く。関本ホームイン、連続タイムリー二塁打!6−7、1点差でなお二死二塁!
大矢監督が相川を呼び打ち合わせ。聞くところでは、金本と勝負しろ、そう強気を喚起したという。結果的にその判断は間違っていた。たとえ金本敬遠後に林が逆転打を打ったとしても、それでもここで金本と勝負はあり得なかった、金本の打席を見終えた後、大矢監督はそう思っただろう。
初球、内角スライダー、外すつもりだっただろうが大きく外れる。この時点で金本は次の球が何で、自分はそれをどう打って、その打球がどうなって、その結果球場がどうなるのか、すべてわかっていたのではないだろうか。
2球目、外角低め相川のミット、そこへ目がけて152km/hの素晴らしい直球が伸びていく。角度を合わせてインパクト、左足を強く蹴り込む、ファールにすることは許されない、重心は左に残して、腰のひねりはゆっくり、手首をこねない、ヘッドを返しすぎないパンチショット、カンペキ!前進守備のレフトバック、頭は越える…フェンスまでは行く…入ったあああ!逆転2ラン!8−7!
一塁ベースを回って小さく拳を握って優しい笑顔の金本。興奮ではなく、ホッとしたような表情にも見える。やっぱりすべてわかっていたことだったんだね。
最終回、藤川球児が3人で締める。打ち取られた仁志が、内川が、村田が、そして一塁側のベンチに流れる時間がいちいち流れたり止まったりする。恐ろしい試合だった。選手だけではなく、斉藤投手コーチまで自分を取り戻す時間を必要としていた。
黄色い花が軽やかに風に揺れ、ブルーが深海に沈んでいった。
勝負とはなんと厳しいものなのだろう。その勝ちと負けの間にあるほんの些細なものがどれだけ大切なのか。職に軽重はあれど大小はなし。貴賤はなし。
失敗はある。それによってチームにダメージを与えてしまうこともある。それを取り返すべく自らが忠実に丁寧に自分の職責を全うすることで、チーム全体でそれを修復させる力が働き、大きな流れを作る。タイガースクルーの信じられない働きぶりに敬服するばかりだった。