自称阪神タイガース評論家（跡地）

　ほんの一瞬でなってしまったというから恐ろしい。でもこれは誰の身に、いつ起きてもおかしくないこと。特に球児の場合はね。

　今まで見たことのないような直球を投げていた頃、きっとこれは何か奇跡のような現象なのだろうと感じたものだ。あのひょろひょろとした体をいっぱいに使って、それこそ足の先から指先まで、すべての調和が取れた瞬間に生まれるミラクルが球を浮き上がらせるのだと思った。と、同時に何やら不吉な予感のようなものも一緒に感じざるを得なかった。この奇跡のボールの代償として、球児の細い体にはきっとものすごい負担がかかっていて、早晩この奇跡の球は二度と見られなくなる…。そうはっきり口には出さずとも、そんな気持ちで球児の奇跡のボールをありがたく見させてもらっていた。

　幸いなことに今まで大きなケガもなく、そんな予感を吹っ飛ばして球児は活躍を続けることができた。確かに奇跡のボールは見ることができなくなってしまったけれど、その代わりに球児は長く活躍できる健康な体を手に入れたのだ…そう思うとホッとした。

　それでもやはり軸足を支えるヒザ間接周辺に長年大きな負担がかかっていたのは間違いないだろう。ここで外傷という形でしっかりチェックできることを幸運と思えばいいと思う。経験を積んで、まだまだ成長したいという気持ちが強い球児なのだからね。

　さて、しかしタイガースとしてはそうも言ってられない。誰も球児の代わりなど務められぬ、えらいこっちゃえらいこっちゃ…。まあでもね、これもまた災い転じて福となさなきゃね。実際どうなるかはわからないが、球児はポスティングを封印して、FAでのメジャー移籍希望をずっとほのめかし続けて来たのだから、来季はいないものだと思っていなきゃいけない。できることならその心構えもしなきゃいけない今季だった。

　つい忘れがちだが、０３年も０５年も「急造クローザー」で優勝したのだ。他球団でも頼みのクローザーやセットアップの離脱に対して、これからの力で対応しているケースも多い。タイガースの場合も力と経験のある投手がたくさんいるので、ケースバイケースで人選することもできるだろうが、加えて大胆に来期以後を予測したチャレンジも必要だと思う。

　球児にもチームにも苦しい緊急事態には違いないが、「必要に迫られる」という事態を得られたことを幸運だとでも思わないとね。つきなみではあるけれど…。

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