2005.06.23 Thursday
スコアボードは、前日とまったく同じだった。2回表と3回表にドラゴンズが1点ずつ取る。先頭打者の四球と二死からのタイムリー。井川同様、安藤も制球の割に球の走りは良く、最少失点で踏みとどまる。4回裏にタイガースが反撃開始のソロHRで1点。そしてこのソロを打つものが最終的にヒーローになるところまで同じ。前日は矢野、この日は鳥谷。ついにインハイの直球をハードヒットした。オープン戦開始当初の打撃だ。
ただし前日と違っていたのは、逆転打が出るタイミング。この日、5回裏は同点止まりで、ヒーローの一打が出たのは、夜中11時寸前のことだった…。
勝つと負ける、勝つと分けるでは大違い。もし分けたならタイガースナインは早々にベンチを引き上げる「敗者の退場」、ドラゴンズは握手で締める「勝者の儀式」を行うところだった。
「浮上のきっかけになると思うよ。この負けは」という落合監督の呪文に、まだどれだけの魔力が残っているか。
5回2失点の先発安藤を、気迫のブルペンが繋いだ。橋本、ウィリアムス、藤川、久保田、江草。特に最後に投げた江草は短い投球間隔で、相手打者にゆとりを与えず、勝つリズムを作った。「ボクだけが、打たれるわけにはいかんでしょう。みんな頑張ったんですから」という言葉通り気持ちの入った投球に、3勝目のご褒美がついた。
一方、ドラゴンズも先発川上の後を、岩瀬、高橋聡、川岸、平井と小刻みに繋ぎ、阪神打線に的を絞らせなかった。バックの好守もあり、緊張感のある締まったゲームだった。
引き分けの気配濃厚となった12回ウラ、しかし赤星は、(引き分けではダメだ)と塁上からメッセージを発し続けた。この日もしばしば打撲の患部を気にする素振りを見せた。一死からヒットで出塁すると、2球目に相手投手のマークをかいくぐって好スタートを切るが、鳥谷ファール。この場面、打撃に集中する鳥谷に、赤星のスタートを確認させるのは酷な話、致し方ない。当然バッテリーは盗塁をさせまいと、牽制球を3度繰り返した。しかし赤星の帰塁動作がおかしい。いつもなら余裕で足から滑り込むところが、倒れ込むように手から帰塁すると、その度にゆっくりと立ち上がった。表情には見せなくても、痛みに耐えながら無理をして大きいリードを取っていることがわかった。本当はもう盗塁を試みることはできなかったかも知れないが、以後バッテリーは、勝負が決まる7球目まで鳥谷に直球を投げ続けることになった。
(引き分けではダメだ)。その一部始終を見ていたスタンドのファンは、タイガース・ナインは、打席の鳥谷は、赤星を絶対にホームに返すのだと心に決めただろう。150km/h前後の平井の速球に鳥谷は押されていた。しかしコースをしっかりと見極めながら、少しずつタイミングを修正した。カウント2−3、6球目の直球、赤星スタート、ファール。赤星の目が虚ろになっているように見えた。7球目、真ん中高めの直球、鳥谷のバットに迷いはなかった。真っ直ぐに振り下ろした両の拳、微動だにしない頭と右肩、バットのヘッドは上向きの角度を維持したまま、最高速でボールを打ち抜いた。良い角度で上がる…。レフトポール際、切れるか?入るか?しかし、驚くことにボールはまったく切れる素振りを見せずにどこまでも伸び、レフトスタンド上段に吸い込まれていた。あくまでも真っ直ぐに、ことによるとわずかにドロー回転していたのかも知れない。
ある人はこの打撃技術のことを「レフトに流すのではなく、レフトに引っ張る」と言った。そんな打球を甲子園のレフトラッキーゾーン、レフトスタンドに数知れず叩き込んだ掛布雅之氏の言葉だ。インパクトの瞬間のリプレイを見ていたら思い出した。
ただし前日と違っていたのは、逆転打が出るタイミング。この日、5回裏は同点止まりで、ヒーローの一打が出たのは、夜中11時寸前のことだった…。
勝つと負ける、勝つと分けるでは大違い。もし分けたならタイガースナインは早々にベンチを引き上げる「敗者の退場」、ドラゴンズは握手で締める「勝者の儀式」を行うところだった。
「浮上のきっかけになると思うよ。この負けは」という落合監督の呪文に、まだどれだけの魔力が残っているか。
5回2失点の先発安藤を、気迫のブルペンが繋いだ。橋本、ウィリアムス、藤川、久保田、江草。特に最後に投げた江草は短い投球間隔で、相手打者にゆとりを与えず、勝つリズムを作った。「ボクだけが、打たれるわけにはいかんでしょう。みんな頑張ったんですから」という言葉通り気持ちの入った投球に、3勝目のご褒美がついた。
一方、ドラゴンズも先発川上の後を、岩瀬、高橋聡、川岸、平井と小刻みに繋ぎ、阪神打線に的を絞らせなかった。バックの好守もあり、緊張感のある締まったゲームだった。
引き分けの気配濃厚となった12回ウラ、しかし赤星は、(引き分けではダメだ)と塁上からメッセージを発し続けた。この日もしばしば打撲の患部を気にする素振りを見せた。一死からヒットで出塁すると、2球目に相手投手のマークをかいくぐって好スタートを切るが、鳥谷ファール。この場面、打撃に集中する鳥谷に、赤星のスタートを確認させるのは酷な話、致し方ない。当然バッテリーは盗塁をさせまいと、牽制球を3度繰り返した。しかし赤星の帰塁動作がおかしい。いつもなら余裕で足から滑り込むところが、倒れ込むように手から帰塁すると、その度にゆっくりと立ち上がった。表情には見せなくても、痛みに耐えながら無理をして大きいリードを取っていることがわかった。本当はもう盗塁を試みることはできなかったかも知れないが、以後バッテリーは、勝負が決まる7球目まで鳥谷に直球を投げ続けることになった。
(引き分けではダメだ)。その一部始終を見ていたスタンドのファンは、タイガース・ナインは、打席の鳥谷は、赤星を絶対にホームに返すのだと心に決めただろう。150km/h前後の平井の速球に鳥谷は押されていた。しかしコースをしっかりと見極めながら、少しずつタイミングを修正した。カウント2−3、6球目の直球、赤星スタート、ファール。赤星の目が虚ろになっているように見えた。7球目、真ん中高めの直球、鳥谷のバットに迷いはなかった。真っ直ぐに振り下ろした両の拳、微動だにしない頭と右肩、バットのヘッドは上向きの角度を維持したまま、最高速でボールを打ち抜いた。良い角度で上がる…。レフトポール際、切れるか?入るか?しかし、驚くことにボールはまったく切れる素振りを見せずにどこまでも伸び、レフトスタンド上段に吸い込まれていた。あくまでも真っ直ぐに、ことによるとわずかにドロー回転していたのかも知れない。
ある人はこの打撃技術のことを「レフトに流すのではなく、レフトに引っ張る」と言った。そんな打球を甲子園のレフトラッキーゾーン、レフトスタンドに数知れず叩き込んだ掛布雅之氏の言葉だ。インパクトの瞬間のリプレイを見ていたら思い出した。