2005.08.21 Sunday
前日の大敗を完全払拭してタイガース快勝。前日の惜敗を引きずるかのようにドラゴンズ大敗。ゲーム差は4.0となる。まだまだ勝負はこれからで、ここで油断してはならない。だが、今季の最終結果について、おぼろげなイメージを抱かせるのに十分な結果。この日の結果はとても大きい。
以前に「杉山が好きだ」と告白したが、訂正することにする(笑)。おそらく今まで、杉山はにやけ顔のせいで損をしてきただろう。何度となく「何ヘラヘラ笑ろとんねん」と責められたに違いない。以前ドラゴンズ戦で死球をぶつけた後、笑いながら謝っている様子を見て、底知れぬ怖さを感じたが、どうやら緊迫したり、注目が集まったりすると、タラ〜っとひとしずくの冷や汗をかきながら、表情が笑顔になってしまう男のようだ。だが、このヘラヘラしたあんちゃんの評価は急上昇、「あの人、いつもはただヘラヘラ笑ってて何考えてるかさっぱりわかんないんだけど、ああ見えてけっこういいところあるのよ、こないだも…」と近所のおばちゃんも大絶賛という感じ(笑)。
この日は、あたかも杉山とバックを守る野手陣が信頼関係を構築していく一日のようだった。杉山の調子はあまり良い方ではなかった。指にかかった良い球もあるが、やや甘めに入る傾向が出ていた。初回は藤本の個人技に助けられた。青木をセンター前安打で出し、続く宮本は高いバウンドで二遊間のゴロ。藤本追いついて、そのまま二塁ベースを踏み、ジャンピングスローで併殺を完成させた。だがその後も岩村四球、ラミレス二塁打と、ピリッとしない。しっかりせい!なんとか宮出を打ち取る。
二回ウラは、一死一塁で小野の遊ゴロを鳥谷がトンネル。打球が速くあっというまに左中間を抜ける…一塁走者一気に生還。併殺で終了のはずが、1点失ってなお一死二塁となる。これまで好守を続けてきた鳥谷にしては珍しすぎる軽率なプレー。なにか前日の捨てゲームから、集中力を戻し切れていないような印象を受けた。続く館山はバントを失敗し、追い込まれながらも、高いバウンドのゴロで、二死三塁、内野安打王青木に繋ぐ。がんばれ、ここで点を失ったら鳥谷がなお凹む…。イージーなサードゴロに踏ん張る。
スワローズ先発の館山は、前回甲子園で三塁を踏めぬ完封を喫した相手。この日も手を焼いていた。右打者へは懐に食い込むシュート、外角へ直球とスライダー。左打者へは逃げていくシュート、さらにやっかいなのが体に向かってくるような投げ方から、最後インローいっぱいに曲がって入って来るシュート。1回二死三塁の好機で、あの金本が腰を引いて逃げた球で見逃し三振を取られている。加えて、どちらにも有効な、タイミングを外すチェンジアップがあるのだから、打ちづらいことこの上ない。それでも3回表には、鳥谷、シーツがしっかりミートして打ち返すも、踏み込みが今ひとつ弱く、相次いでセンター青木の正面へのライナーとなる。流れはスワローズにあった。
3回ウラ、先頭宮本のどん詰まりのボテボテ。どうしようもない内野安打が今岡の前へ。無死一塁。続く岩村の地を這うような打球は二塁手藤本の正面へ、完全な併殺コース…だが送球を焦り、グラブからボールがこぼれる…二塁送球をあきらめ、あわてて一塁に投げるが大きく捕手寄りに逸れ悪送球。無死二三塁とピンチを拡げてしまう。久保コーチが出てきて集まる内野手。すまん、杉山…1点は捨てろ、この後しっかり行こう。
だが続くラミレスへは初球を死球で、無死満塁。ところが、ここで杉山の「意外といい人」魂に火が点いた。ここで点を取られたら、藤本がなお凹む。宮出への入り、ここしかないという外角低めいっぱいにキレの良いスライダーを二つ続けて決める。続く3球目はストライクからボールになるチェンジアップで泳がせ、二飛、一死。リグスへは予定通り外直球のボールから入り、高めのスライダーで釣って遊飛、二死。最後は懸命な杉山にツキも味方して、城石を一ライナーに仕留め、大ピンチを切り抜ける。
ここで岡田監督が動く。選手をベンチに集め、その中心から檄を飛ばす。「今までやってきたことを忘れたらアカン。1つ1つ集中していけ」。何と言うことはない。言葉の内容が重要なのではない。いつもは選手、コーチに任せきりの構えを取り続ける岡田監督自身が試合中に直接指示を与えたことが重要なのだ。6/29米子でのカープ戦、走塁ミスが重なった試合で、「何じゃお前ら! 何を慌てとんねん! どしっと構えて、野球せんかい!」と怒鳴ったことがある。この日もエラーに加え、桧山の牽制死もあり、集中力の欠如、焦りが見え隠れしていた。あの日と同じように、この檄が逆転の流れを呼び込んだ。
解説の加藤博一氏によれば、試合前、桧山は岡田監督にかなり手厳しく「オマエはもっと初球から打ちに行かんかい!」と叱責されていたという。この日は第1打席(中安)から積極的な姿勢が見えていた。4回表二死、初球の直球を強振、振り遅れて空振り。良い感じだ。2,3球目、低めのボールゾーンに落ちる球を見切る。4球目は、インハイへの直球、これはコースが良すぎる、手を出さず。カウント2−2からの5球目は沈む球がストライクゾーン低めへ。「桧山攻略法」どおりの勝負球だが、同じ球種のボール球を2つ見ていたこと、前のインハイの直球で、落ちる球に山を張れたことが大きかった。やや泳ぎながらもフルスイングした打球は、タイガースファンが溢れるバックスクリーン右に飛び込んだ。「今日も館山にやられるのか」という恐怖と焦りを吹き飛ばす同点HRだった。
4回ウラ、アクシデント。打撃の良い館山が放ったピッチャー返しが、杉山の足に当たる。治療の後、マウンドに戻る杉山は、例の照れたような笑い顔。掴みかけた流れを離してなるものかという平常心で後続を断つ。
5回表、桧山の一発から館山のリズムが狂い始める。藤本へはバランス崩れて0−3とする。なんとか持ち直して三ゴロを打たせるが、これを岩村が悪送球し、無死一塁。それまでピタッと締まっていたスワローズ側に気流の乱れが生じている。
当然バントの構えの杉山に対して、館山の初球は顔にまっしぐら直球。杉山も必死で逃げるも避けきれず…うつぶせに倒れ込んで動かない杉山。いったいどこに当たったんだ!しばらくすると杉山は立ち上がり、またしても治療のため裏に下がる。当たったのは胸の上部、細い骨のあるところだけに心配が募る。
ほどなく、杉山が小走りでダグアウトから表れ、例の笑い顔で館山に会釈しながら一塁ベースに立つ。私はいまだかつて、深刻な死球を受けて、笑い顔で相手投手に会釈をする選手など見たことがない。敵も味方も全員が心配した、異様な球場の空気を一瞬にして振り払い、清々しい気持ちにさせたのはもちろんのこと、もう勝ち負けなんてどっちでも良い、ああ良かった!と、皆に、ことにスワローズ側に思わせた、最高の笑顔だった。
打席に向かう赤星は、集中を増している。投手に死球?許すまじ。鬼の形相である。無死一二塁、初球をまるで復讐のようなセンター返し、当たりが良く無死満塁。
タイムリーエラーを犯した鳥谷からも珍しく気迫を感じた。もはや館山には鳥谷を下に見る余裕はなくストレートの四球、押し出しで2−1と逆転。続くシーツはインハイに詰まっても、もう勢いの違いでライト前にぽとりと落ちる、3−1。
そして金本はもちろん第1打席で見逃した、シュート気味のインサイドのボールを待っていた。必ず来るその球を打つ。集中力は極限状態だ。3球目にやってきたその球をコンパクトにミートしただけで、打球は右中間深くへ消えていった。タイガースで初めての満塁HRで7−1とし、試合を決めた。
他にどんなことがあったかというと、満身創痍の杉山は5回のマウンドに上がり、ラミレスに一発を献上するも、ど根性で投げ切り、勝利投手の権利を取って降板。検査を受け、足、胸とも打撲、軽傷の診断を受ける。
代わって6回を桟原、7,8回を江草、9回を太陽が繋ぐ。桟原、江草はいつも通りの素晴らしい投球。太陽は小野にHRを打たれるなど、あまり良い内容ではなかった。
7回表には矢野がソロHRで加点。低めのスライダーを矢野特有の美しいスイングでバックスクリーンに運ぶ。2日間の休養で、矢野の打撃は完全に復調した。
8回表の追加点は、鳥谷のヒットと今岡の凡フライを青木とラミレスがお見合いしたという、本当はエラーの「なんちゃって打点」。鳥谷の打撃が良くなっている。この日、第4,5打席で打ったヒットは、いずれも強いゴロでライト前へ。ライト側への長打も近そうな、予感のある2安打だった。一方、今岡は相変わらず良くない。後ろ重心が強すぎで、差し込まれることが多すぎる。それでも出しておけば打点がつくから不思議なのだが(笑)。
この日の試合、見られなかった方が多いようなので、今日はダラダラと試合経過を追ってみたのだが、コーチングスタッフ、投手、野手の結束強化を感じた大きな1試合だったように思う。
以前に「杉山が好きだ」と告白したが、訂正することにする(笑)。おそらく今まで、杉山はにやけ顔のせいで損をしてきただろう。何度となく「何ヘラヘラ笑ろとんねん」と責められたに違いない。以前ドラゴンズ戦で死球をぶつけた後、笑いながら謝っている様子を見て、底知れぬ怖さを感じたが、どうやら緊迫したり、注目が集まったりすると、タラ〜っとひとしずくの冷や汗をかきながら、表情が笑顔になってしまう男のようだ。だが、このヘラヘラしたあんちゃんの評価は急上昇、「あの人、いつもはただヘラヘラ笑ってて何考えてるかさっぱりわかんないんだけど、ああ見えてけっこういいところあるのよ、こないだも…」と近所のおばちゃんも大絶賛という感じ(笑)。
この日は、あたかも杉山とバックを守る野手陣が信頼関係を構築していく一日のようだった。杉山の調子はあまり良い方ではなかった。指にかかった良い球もあるが、やや甘めに入る傾向が出ていた。初回は藤本の個人技に助けられた。青木をセンター前安打で出し、続く宮本は高いバウンドで二遊間のゴロ。藤本追いついて、そのまま二塁ベースを踏み、ジャンピングスローで併殺を完成させた。だがその後も岩村四球、ラミレス二塁打と、ピリッとしない。しっかりせい!なんとか宮出を打ち取る。
二回ウラは、一死一塁で小野の遊ゴロを鳥谷がトンネル。打球が速くあっというまに左中間を抜ける…一塁走者一気に生還。併殺で終了のはずが、1点失ってなお一死二塁となる。これまで好守を続けてきた鳥谷にしては珍しすぎる軽率なプレー。なにか前日の捨てゲームから、集中力を戻し切れていないような印象を受けた。続く館山はバントを失敗し、追い込まれながらも、高いバウンドのゴロで、二死三塁、内野安打王青木に繋ぐ。がんばれ、ここで点を失ったら鳥谷がなお凹む…。イージーなサードゴロに踏ん張る。
スワローズ先発の館山は、前回甲子園で三塁を踏めぬ完封を喫した相手。この日も手を焼いていた。右打者へは懐に食い込むシュート、外角へ直球とスライダー。左打者へは逃げていくシュート、さらにやっかいなのが体に向かってくるような投げ方から、最後インローいっぱいに曲がって入って来るシュート。1回二死三塁の好機で、あの金本が腰を引いて逃げた球で見逃し三振を取られている。加えて、どちらにも有効な、タイミングを外すチェンジアップがあるのだから、打ちづらいことこの上ない。それでも3回表には、鳥谷、シーツがしっかりミートして打ち返すも、踏み込みが今ひとつ弱く、相次いでセンター青木の正面へのライナーとなる。流れはスワローズにあった。
3回ウラ、先頭宮本のどん詰まりのボテボテ。どうしようもない内野安打が今岡の前へ。無死一塁。続く岩村の地を這うような打球は二塁手藤本の正面へ、完全な併殺コース…だが送球を焦り、グラブからボールがこぼれる…二塁送球をあきらめ、あわてて一塁に投げるが大きく捕手寄りに逸れ悪送球。無死二三塁とピンチを拡げてしまう。久保コーチが出てきて集まる内野手。すまん、杉山…1点は捨てろ、この後しっかり行こう。
だが続くラミレスへは初球を死球で、無死満塁。ところが、ここで杉山の「意外といい人」魂に火が点いた。ここで点を取られたら、藤本がなお凹む。宮出への入り、ここしかないという外角低めいっぱいにキレの良いスライダーを二つ続けて決める。続く3球目はストライクからボールになるチェンジアップで泳がせ、二飛、一死。リグスへは予定通り外直球のボールから入り、高めのスライダーで釣って遊飛、二死。最後は懸命な杉山にツキも味方して、城石を一ライナーに仕留め、大ピンチを切り抜ける。
ここで岡田監督が動く。選手をベンチに集め、その中心から檄を飛ばす。「今までやってきたことを忘れたらアカン。1つ1つ集中していけ」。何と言うことはない。言葉の内容が重要なのではない。いつもは選手、コーチに任せきりの構えを取り続ける岡田監督自身が試合中に直接指示を与えたことが重要なのだ。6/29米子でのカープ戦、走塁ミスが重なった試合で、「何じゃお前ら! 何を慌てとんねん! どしっと構えて、野球せんかい!」と怒鳴ったことがある。この日もエラーに加え、桧山の牽制死もあり、集中力の欠如、焦りが見え隠れしていた。あの日と同じように、この檄が逆転の流れを呼び込んだ。
解説の加藤博一氏によれば、試合前、桧山は岡田監督にかなり手厳しく「オマエはもっと初球から打ちに行かんかい!」と叱責されていたという。この日は第1打席(中安)から積極的な姿勢が見えていた。4回表二死、初球の直球を強振、振り遅れて空振り。良い感じだ。2,3球目、低めのボールゾーンに落ちる球を見切る。4球目は、インハイへの直球、これはコースが良すぎる、手を出さず。カウント2−2からの5球目は沈む球がストライクゾーン低めへ。「桧山攻略法」どおりの勝負球だが、同じ球種のボール球を2つ見ていたこと、前のインハイの直球で、落ちる球に山を張れたことが大きかった。やや泳ぎながらもフルスイングした打球は、タイガースファンが溢れるバックスクリーン右に飛び込んだ。「今日も館山にやられるのか」という恐怖と焦りを吹き飛ばす同点HRだった。
4回ウラ、アクシデント。打撃の良い館山が放ったピッチャー返しが、杉山の足に当たる。治療の後、マウンドに戻る杉山は、例の照れたような笑い顔。掴みかけた流れを離してなるものかという平常心で後続を断つ。
5回表、桧山の一発から館山のリズムが狂い始める。藤本へはバランス崩れて0−3とする。なんとか持ち直して三ゴロを打たせるが、これを岩村が悪送球し、無死一塁。それまでピタッと締まっていたスワローズ側に気流の乱れが生じている。
当然バントの構えの杉山に対して、館山の初球は顔にまっしぐら直球。杉山も必死で逃げるも避けきれず…うつぶせに倒れ込んで動かない杉山。いったいどこに当たったんだ!しばらくすると杉山は立ち上がり、またしても治療のため裏に下がる。当たったのは胸の上部、細い骨のあるところだけに心配が募る。
ほどなく、杉山が小走りでダグアウトから表れ、例の笑い顔で館山に会釈しながら一塁ベースに立つ。私はいまだかつて、深刻な死球を受けて、笑い顔で相手投手に会釈をする選手など見たことがない。敵も味方も全員が心配した、異様な球場の空気を一瞬にして振り払い、清々しい気持ちにさせたのはもちろんのこと、もう勝ち負けなんてどっちでも良い、ああ良かった!と、皆に、ことにスワローズ側に思わせた、最高の笑顔だった。
打席に向かう赤星は、集中を増している。投手に死球?許すまじ。鬼の形相である。無死一二塁、初球をまるで復讐のようなセンター返し、当たりが良く無死満塁。
タイムリーエラーを犯した鳥谷からも珍しく気迫を感じた。もはや館山には鳥谷を下に見る余裕はなくストレートの四球、押し出しで2−1と逆転。続くシーツはインハイに詰まっても、もう勢いの違いでライト前にぽとりと落ちる、3−1。
そして金本はもちろん第1打席で見逃した、シュート気味のインサイドのボールを待っていた。必ず来るその球を打つ。集中力は極限状態だ。3球目にやってきたその球をコンパクトにミートしただけで、打球は右中間深くへ消えていった。タイガースで初めての満塁HRで7−1とし、試合を決めた。
他にどんなことがあったかというと、満身創痍の杉山は5回のマウンドに上がり、ラミレスに一発を献上するも、ど根性で投げ切り、勝利投手の権利を取って降板。検査を受け、足、胸とも打撲、軽傷の診断を受ける。
代わって6回を桟原、7,8回を江草、9回を太陽が繋ぐ。桟原、江草はいつも通りの素晴らしい投球。太陽は小野にHRを打たれるなど、あまり良い内容ではなかった。
7回表には矢野がソロHRで加点。低めのスライダーを矢野特有の美しいスイングでバックスクリーンに運ぶ。2日間の休養で、矢野の打撃は完全に復調した。
8回表の追加点は、鳥谷のヒットと今岡の凡フライを青木とラミレスがお見合いしたという、本当はエラーの「なんちゃって打点」。鳥谷の打撃が良くなっている。この日、第4,5打席で打ったヒットは、いずれも強いゴロでライト前へ。ライト側への長打も近そうな、予感のある2安打だった。一方、今岡は相変わらず良くない。後ろ重心が強すぎで、差し込まれることが多すぎる。それでも出しておけば打点がつくから不思議なのだが(笑)。
この日の試合、見られなかった方が多いようなので、今日はダラダラと試合経過を追ってみたのだが、コーチングスタッフ、投手、野手の結束強化を感じた大きな1試合だったように思う。