2006.06.13 Tuesday
わかっていることなんだから、スタンドも大声援で迎えてやりゃあいいものを、微妙なザワザワ混じり。先頭の代打高木を二ゴロ、大丈夫だ。悪くない。問題はここから、当たっている上位打線。しかも塁に出せば、機動力を絡めてうるさい。赤田に対し、初球スライダーがひっかかりボール、二球目この久保田の生命線、外のスライダーを再び要求するも同じようにひっかかってボール。久保田を信じかけたのはつかの間、球場全体に「おいおい〜」という雰囲気が満ちる。結局、赤田を歩かせ一死一塁。
続く片岡への初球、スライダーを叩きつけてしまう。暴投となり、赤田は労せずして二塁へ。登板を終えた藤川は不思議と穏やかな笑顔、久保田に「大丈夫だよ」という電波を送る。しかし、あろうことか、3球目まったく同じようにスライダーがワンバウンドになり、野口の股間を抜けてしまう。制球を意識すればするほど、手投げになり、リリースが早すぎて低投になる。たまらず久保コーチが飛び出していく。途中からマスクを被る野口にとっても、あまりにも厳しい状況だ。
もうこうなりゃ直球で押すしかない、片岡はファールを重ねて逃げる一方。スタンドに入るファールフライをシーツが猛然と追いかける。打たせろ、バックがいるんだという檄。最後は外低めに構えるミットとは逆に内高めに抜けた直球を振らせて三振2アウト。内野は前進隊形を解く。そして久保田への大声援が戻る。開き直ってしまえば久保田は強い。好調中島を二飛に倒し、絶体絶命の危機を逃れる。
このムードならサヨナラだ。9回ウラ、この回からLは左の三井に代える。一発出ればサヨナラ負けという厳しい状況だが、三井の出来が良かった。藤本、関本、野口は簡単に退けられる。
延長10回表、スタンドは静まりかえって、久保田の投球を祈るように見つめる。先頭カブレラはセンターフライ。続く和田の打席、フォークも試すがこれも使えない。頼りは直球だけだ。1−3から和田がショートゴロ、助かった…と思った瞬間、鳥谷の前で打球が大きく弾んだ。イレギュラーのヒットで、一死一塁、代走に福地。カープでもこういうところで盗塁を決めてきた男、こういう代走が一人出てくるだけで大きな重圧がかかる。
次打者平尾への初球、なんとまたしてもスライダーがワンバウンド。ごるあ!何やっとんねん!野口が胸に当てたが横にそれる間に福地は二塁へ。野口も意識過剰で硬くなってしまい、前に落とせない。これでまた変化球が使えない状況を作ってしまう。開き直るしかない…というか、開き直らないと投げられんのかいな、まったく。俊足走者が二塁なので、外野もぐっと前進守備。もうバッターオンリー、三振が欲しい。直球でグイグイ押し込む。途中、モーションを盗まれて三盗を企てられるも気にせず、ぐいぐい、平尾ファールで助かった。しかし最後は真ん中高めに伸びる直球で空振り三振。この回もなんとか行けるやろ。しかし、ライオンズの打者を甘く見ていた。7番高山、3球目外角低めへの153km/hの直球を見事に弾き返された。
悲鳴の中、低い打球が前進守備のセンター右へ…中村豊が半身の体勢で必死に下がる…後方に倒れ込むような体勢からジャンプ…腕を目一杯伸ばして、捕った!勢い余って、着地後ぐるんと回転しても、グラブの口は堅く閉ざされたまま。しばしの間、放心したようにひざまずく。打たれた瞬間、くるっと振り向き、打球の行方を見ていた久保田が右手とグラブで拝むようにしてホッと息を吐く。おそらくボールがバットに当たる瞬間、すでにユタカはスタートを切っていたのではないか。鋭い打球が空中にあった、ほんのわずかな時間でユタカは何メートル走ったのだろう。
04年オフ、ユタカは二軍コーチ就任を打診されたという。「守備と走塁が人並み以下になったら」と首を横に振ったが、その判断は圧倒的に正しかった。ライト桧山が駆け寄ってタッチ、この時、初めてユタカの顔に、大仕事を終えた満足そうな表情が浮かんだ。
だーかーらー、こうなりゃサヨナラだって言うとろうが!ところが三井がスゴイ。ここ甲子園で、これだけの流れを寄せ付けない投球。桧山、鳥谷、中村豊に仕事をさせない。え?ウチがへぼいだけ?(笑)
延長11回表、久保田3イニングス目。クローザーなのに延長3イニングスが初期設定という、世にも珍しい尻上がり系抑え。やっとエンジンがかかって、細川、おかわり、赤田を変化球まじえて三者三振!いいぞー!久保田!…ダホ、遅すぎるわ!(笑)
もうこれで文句ないだろう。三井も下がってくれて、向こうもクローザー、久保田の同級生小野寺が登板。しかし経験の少なさが出たか、甲子園に飲まれてしまう。シーツ倒れて、金本。雰囲気ありまくり。変化球がことごとく抜けて、ストレートの四球。代打スペンサー。1−1からの3球目、甘い直球を悠然と見送り、追い込まれる。相変わらずやなぁ、スペンちゃん(笑)。2−2からの外の直球が勝負球、わずかに低いと見切る。結局、6球の間、一度もバットを振らず、スペンサーが四球を奪う。スゴイ!(笑)。
正田コーチが次打者藤本を呼び止める。岡田監督が出る。代打、今岡登場。場内がざわめく。ざわめきが徐々に大きな波のうねりになったころ、コール。「6番藤本に代わりましてバッターは今岡」スタンドが揺れ、大音響が沸き起こる。
周囲の喧噪は今岡の耳に入っていなかったのではないか。それほど今岡の表情は冷静だった。やるべきことを決めているそんな顔に見えた。
初球145km/h外角低めいっぱいに直球が決まり1−0。今岡の冷静な表情に一つの変化もない。2球目、137km/hのスライダーが外角やや高く…今岡のバットは迷い無く、理想的な軌道で最短距離にボールを捉えた。糸を引くようなライナーが、ライト高山の頭上を越える…文句なし!決まった!…右腕をぐるんぐるんと大きく回しながら今岡は一塁ベースを蹴り、ビッグスマイルでバンザイをした。二塁ベース付近にナインが駆け寄り、歓喜の祝福、こういう場所が良く似合う、ユタカとスペンサー(笑)。久保田もいるね。なぜかユタカに蹴りを入れる金本(笑)。
今岡はずっと去年の自分、147打点の強打者である自分と戦っていたのかも知れない。春、自主トレの時から、キャンプでも、オープン戦でも、シーズンが開幕しても、ずっと148打点目を叩き出す自分だけをイメージして取り組んでいたのだろう。
思うとおりにならないシーズンがどんどん進む中で、失われた道を模索していているのが今の今岡なのかも知れない。
ヒーローインタビューの今岡は、「めちゃくちゃうれしいです」とありのままの気持ちを繰り返した。そして時に間をおき「ふふふ」と笑いながら、涙が溢れるのを我慢していたようだった。
どうしてもチームの役に立ちたいと必死の思いで稼いだ1打点は、勝利に大きく貢献する1打点になった。そしてこの1勝は単なる1勝以上の意味を持つはずだ。
優勝の輪の中に胸を張って飛び込んでいく。これが「06年今岡」を支える一打になることを願う。
続く片岡への初球、スライダーを叩きつけてしまう。暴投となり、赤田は労せずして二塁へ。登板を終えた藤川は不思議と穏やかな笑顔、久保田に「大丈夫だよ」という電波を送る。しかし、あろうことか、3球目まったく同じようにスライダーがワンバウンドになり、野口の股間を抜けてしまう。制球を意識すればするほど、手投げになり、リリースが早すぎて低投になる。たまらず久保コーチが飛び出していく。途中からマスクを被る野口にとっても、あまりにも厳しい状況だ。
もうこうなりゃ直球で押すしかない、片岡はファールを重ねて逃げる一方。スタンドに入るファールフライをシーツが猛然と追いかける。打たせろ、バックがいるんだという檄。最後は外低めに構えるミットとは逆に内高めに抜けた直球を振らせて三振2アウト。内野は前進隊形を解く。そして久保田への大声援が戻る。開き直ってしまえば久保田は強い。好調中島を二飛に倒し、絶体絶命の危機を逃れる。
このムードならサヨナラだ。9回ウラ、この回からLは左の三井に代える。一発出ればサヨナラ負けという厳しい状況だが、三井の出来が良かった。藤本、関本、野口は簡単に退けられる。
延長10回表、スタンドは静まりかえって、久保田の投球を祈るように見つめる。先頭カブレラはセンターフライ。続く和田の打席、フォークも試すがこれも使えない。頼りは直球だけだ。1−3から和田がショートゴロ、助かった…と思った瞬間、鳥谷の前で打球が大きく弾んだ。イレギュラーのヒットで、一死一塁、代走に福地。カープでもこういうところで盗塁を決めてきた男、こういう代走が一人出てくるだけで大きな重圧がかかる。
次打者平尾への初球、なんとまたしてもスライダーがワンバウンド。ごるあ!何やっとんねん!野口が胸に当てたが横にそれる間に福地は二塁へ。野口も意識過剰で硬くなってしまい、前に落とせない。これでまた変化球が使えない状況を作ってしまう。開き直るしかない…というか、開き直らないと投げられんのかいな、まったく。俊足走者が二塁なので、外野もぐっと前進守備。もうバッターオンリー、三振が欲しい。直球でグイグイ押し込む。途中、モーションを盗まれて三盗を企てられるも気にせず、ぐいぐい、平尾ファールで助かった。しかし最後は真ん中高めに伸びる直球で空振り三振。この回もなんとか行けるやろ。しかし、ライオンズの打者を甘く見ていた。7番高山、3球目外角低めへの153km/hの直球を見事に弾き返された。
悲鳴の中、低い打球が前進守備のセンター右へ…中村豊が半身の体勢で必死に下がる…後方に倒れ込むような体勢からジャンプ…腕を目一杯伸ばして、捕った!勢い余って、着地後ぐるんと回転しても、グラブの口は堅く閉ざされたまま。しばしの間、放心したようにひざまずく。打たれた瞬間、くるっと振り向き、打球の行方を見ていた久保田が右手とグラブで拝むようにしてホッと息を吐く。おそらくボールがバットに当たる瞬間、すでにユタカはスタートを切っていたのではないか。鋭い打球が空中にあった、ほんのわずかな時間でユタカは何メートル走ったのだろう。
04年オフ、ユタカは二軍コーチ就任を打診されたという。「守備と走塁が人並み以下になったら」と首を横に振ったが、その判断は圧倒的に正しかった。ライト桧山が駆け寄ってタッチ、この時、初めてユタカの顔に、大仕事を終えた満足そうな表情が浮かんだ。
だーかーらー、こうなりゃサヨナラだって言うとろうが!ところが三井がスゴイ。ここ甲子園で、これだけの流れを寄せ付けない投球。桧山、鳥谷、中村豊に仕事をさせない。え?ウチがへぼいだけ?(笑)
延長11回表、久保田3イニングス目。クローザーなのに延長3イニングスが初期設定という、世にも珍しい尻上がり系抑え。やっとエンジンがかかって、細川、おかわり、赤田を変化球まじえて三者三振!いいぞー!久保田!…ダホ、遅すぎるわ!(笑)
もうこれで文句ないだろう。三井も下がってくれて、向こうもクローザー、久保田の同級生小野寺が登板。しかし経験の少なさが出たか、甲子園に飲まれてしまう。シーツ倒れて、金本。雰囲気ありまくり。変化球がことごとく抜けて、ストレートの四球。代打スペンサー。1−1からの3球目、甘い直球を悠然と見送り、追い込まれる。相変わらずやなぁ、スペンちゃん(笑)。2−2からの外の直球が勝負球、わずかに低いと見切る。結局、6球の間、一度もバットを振らず、スペンサーが四球を奪う。スゴイ!(笑)。
正田コーチが次打者藤本を呼び止める。岡田監督が出る。代打、今岡登場。場内がざわめく。ざわめきが徐々に大きな波のうねりになったころ、コール。「6番藤本に代わりましてバッターは今岡」スタンドが揺れ、大音響が沸き起こる。
周囲の喧噪は今岡の耳に入っていなかったのではないか。それほど今岡の表情は冷静だった。やるべきことを決めているそんな顔に見えた。
初球145km/h外角低めいっぱいに直球が決まり1−0。今岡の冷静な表情に一つの変化もない。2球目、137km/hのスライダーが外角やや高く…今岡のバットは迷い無く、理想的な軌道で最短距離にボールを捉えた。糸を引くようなライナーが、ライト高山の頭上を越える…文句なし!決まった!…右腕をぐるんぐるんと大きく回しながら今岡は一塁ベースを蹴り、ビッグスマイルでバンザイをした。二塁ベース付近にナインが駆け寄り、歓喜の祝福、こういう場所が良く似合う、ユタカとスペンサー(笑)。久保田もいるね。なぜかユタカに蹴りを入れる金本(笑)。
今岡はずっと去年の自分、147打点の強打者である自分と戦っていたのかも知れない。春、自主トレの時から、キャンプでも、オープン戦でも、シーズンが開幕しても、ずっと148打点目を叩き出す自分だけをイメージして取り組んでいたのだろう。
思うとおりにならないシーズンがどんどん進む中で、失われた道を模索していているのが今の今岡なのかも知れない。
ヒーローインタビューの今岡は、「めちゃくちゃうれしいです」とありのままの気持ちを繰り返した。そして時に間をおき「ふふふ」と笑いながら、涙が溢れるのを我慢していたようだった。
どうしてもチームの役に立ちたいと必死の思いで稼いだ1打点は、勝利に大きく貢献する1打点になった。そしてこの1勝は単なる1勝以上の意味を持つはずだ。
優勝の輪の中に胸を張って飛び込んでいく。これが「06年今岡」を支える一打になることを願う。