自称阪神タイガース評論家(跡地)

かつてブログ「自称阪神タイガース評論家」があった場所。
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獅子の牙 虎の意地(後)
前編からの続き>
出す?出すの?出すよな、しょうがない(笑)。9回表、久保田登場。
わかっていることなんだから、スタンドも大声援で迎えてやりゃあいいものを、微妙なザワザワ混じり。先頭の代打高木を二ゴロ、大丈夫だ。悪くない。問題はここから、当たっている上位打線。しかも塁に出せば、機動力を絡めてうるさい。赤田に対し、初球スライダーがひっかかりボール、二球目この久保田の生命線、外のスライダーを再び要求するも同じようにひっかかってボール。久保田を信じかけたのはつかの間、球場全体に「おいおい〜」という雰囲気が満ちる。結局、赤田を歩かせ一死一塁。
続く片岡への初球、スライダーを叩きつけてしまう。暴投となり、赤田は労せずして二塁へ。登板を終えた藤川は不思議と穏やかな笑顔、久保田に「大丈夫だよ」という電波を送る。しかし、あろうことか、3球目まったく同じようにスライダーがワンバウンドになり、野口の股間を抜けてしまう。制球を意識すればするほど、手投げになり、リリースが早すぎて低投になる。たまらず久保コーチが飛び出していく。途中からマスクを被る野口にとっても、あまりにも厳しい状況だ。
もうこうなりゃ直球で押すしかない、片岡はファールを重ねて逃げる一方。スタンドに入るファールフライをシーツが猛然と追いかける。打たせろ、バックがいるんだという檄。最後は外低めに構えるミットとは逆に内高めに抜けた直球を振らせて三振2アウト。内野は前進隊形を解く。そして久保田への大声援が戻る。開き直ってしまえば久保田は強い。好調中島を二飛に倒し、絶体絶命の危機を逃れる。

このムードならサヨナラだ。9回ウラ、この回からLは左の三井に代える。一発出ればサヨナラ負けという厳しい状況だが、三井の出来が良かった。藤本、関本、野口は簡単に退けられる。

延長10回表、スタンドは静まりかえって、久保田の投球を祈るように見つめる。先頭カブレラはセンターフライ。続く和田の打席、フォークも試すがこれも使えない。頼りは直球だけだ。1−3から和田がショートゴロ、助かった…と思った瞬間、鳥谷の前で打球が大きく弾んだ。イレギュラーのヒットで、一死一塁、代走に福地。カープでもこういうところで盗塁を決めてきた男、こういう代走が一人出てくるだけで大きな重圧がかかる。
次打者平尾への初球、なんとまたしてもスライダーがワンバウンド。ごるあ!何やっとんねん!野口が胸に当てたが横にそれる間に福地は二塁へ。野口も意識過剰で硬くなってしまい、前に落とせない。これでまた変化球が使えない状況を作ってしまう。開き直るしかない…というか、開き直らないと投げられんのかいな、まったく。俊足走者が二塁なので、外野もぐっと前進守備。もうバッターオンリー、三振が欲しい。直球でグイグイ押し込む。途中、モーションを盗まれて三盗を企てられるも気にせず、ぐいぐい、平尾ファールで助かった。しかし最後は真ん中高めに伸びる直球で空振り三振。この回もなんとか行けるやろ。しかし、ライオンズの打者を甘く見ていた。7番高山、3球目外角低めへの153km/hの直球を見事に弾き返された。

悲鳴の中、低い打球が前進守備のセンター右へ…中村豊が半身の体勢で必死に下がる…後方に倒れ込むような体勢からジャンプ…腕を目一杯伸ばして、捕った!勢い余って、着地後ぐるんと回転しても、グラブの口は堅く閉ざされたまま。しばしの間、放心したようにひざまずく。打たれた瞬間、くるっと振り向き、打球の行方を見ていた久保田が右手とグラブで拝むようにしてホッと息を吐く。おそらくボールがバットに当たる瞬間、すでにユタカはスタートを切っていたのではないか。鋭い打球が空中にあった、ほんのわずかな時間でユタカは何メートル走ったのだろう。
04年オフ、ユタカは二軍コーチ就任を打診されたという。「守備と走塁が人並み以下になったら」と首を横に振ったが、その判断は圧倒的に正しかった。ライト桧山が駆け寄ってタッチ、この時、初めてユタカの顔に、大仕事を終えた満足そうな表情が浮かんだ。

だーかーらー、こうなりゃサヨナラだって言うとろうが!ところが三井がスゴイ。ここ甲子園で、これだけの流れを寄せ付けない投球。桧山、鳥谷、中村豊に仕事をさせない。え?ウチがへぼいだけ?(笑)

延長11回表、久保田3イニングス目。クローザーなのに延長3イニングスが初期設定という、世にも珍しい尻上がり系抑え。やっとエンジンがかかって、細川、おかわり、赤田を変化球まじえて三者三振!いいぞー!久保田!…ダホ、遅すぎるわ!(笑)

もうこれで文句ないだろう。三井も下がってくれて、向こうもクローザー、久保田の同級生小野寺が登板。しかし経験の少なさが出たか、甲子園に飲まれてしまう。シーツ倒れて、金本。雰囲気ありまくり。変化球がことごとく抜けて、ストレートの四球。代打スペンサー。1−1からの3球目、甘い直球を悠然と見送り、追い込まれる。相変わらずやなぁ、スペンちゃん(笑)。2−2からの外の直球が勝負球、わずかに低いと見切る。結局、6球の間、一度もバットを振らず、スペンサーが四球を奪う。スゴイ!(笑)。

正田コーチが次打者藤本を呼び止める。岡田監督が出る。代打、今岡登場。場内がざわめく。ざわめきが徐々に大きな波のうねりになったころ、コール。「6番藤本に代わりましてバッターは今岡」スタンドが揺れ、大音響が沸き起こる。
周囲の喧噪は今岡の耳に入っていなかったのではないか。それほど今岡の表情は冷静だった。やるべきことを決めているそんな顔に見えた。

初球145km/h外角低めいっぱいに直球が決まり1−0。今岡の冷静な表情に一つの変化もない。2球目、137km/hのスライダーが外角やや高く…今岡のバットは迷い無く、理想的な軌道で最短距離にボールを捉えた。糸を引くようなライナーが、ライト高山の頭上を越える…文句なし!決まった!…右腕をぐるんぐるんと大きく回しながら今岡は一塁ベースを蹴り、ビッグスマイルでバンザイをした。二塁ベース付近にナインが駆け寄り、歓喜の祝福、こういう場所が良く似合う、ユタカとスペンサー(笑)。久保田もいるね。なぜかユタカに蹴りを入れる金本(笑)。

今岡はずっと去年の自分、147打点の強打者である自分と戦っていたのかも知れない。春、自主トレの時から、キャンプでも、オープン戦でも、シーズンが開幕しても、ずっと148打点目を叩き出す自分だけをイメージして取り組んでいたのだろう。
思うとおりにならないシーズンがどんどん進む中で、失われた道を模索していているのが今の今岡なのかも知れない。

ヒーローインタビューの今岡は、「めちゃくちゃうれしいです」とありのままの気持ちを繰り返した。そして時に間をおき「ふふふ」と笑いながら、涙が溢れるのを我慢していたようだった。

どうしてもチームの役に立ちたいと必死の思いで稼いだ1打点は、勝利に大きく貢献する1打点になった。そしてこの1勝は単なる1勝以上の意味を持つはずだ。
優勝の輪の中に胸を張って飛び込んでいく。これが「06年今岡」を支える一打になることを願う。

Posted by torao at 08:54 | comments(20)
[退団者]今岡誠
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うわー、また時間がなくなっちゃった。この記事はそのうち、人知れず書き直しておくことでしょう(笑)。
昨日はたくさんコメントありがとう!いろいろパクってます(笑)。
| torao | 2006/06/13 9:19 AM |
あっ、良い感じに盛り込まれてる!(喜)
| ichiken | 2006/06/13 9:48 AM |
前2戦、相手の投手の打点の方が阪神の打点より
多いと言う屈辱的な試合。
みんな毎回必死にやってるんだろうけども、こんな
熱さが表に出る試合が何かきっかけになれば、
この試合は大きな意味を持つと思いますよ。
あの9・7といい、ユタカが大きな仕事をすると
何かが起こるのか?

>クローザーなのに延長3イニングスが初期設定

でも、この初期設定も中々に捨て難い。
クローザーと言うより、スゥエーデンリレーの
最終走者の様(笑)
| 西田辺 | 2006/06/13 10:00 AM |
さすがにしびれる末文です。サッカー惨敗の悔しさが癒されました。m(__;)m

今となってはスペンサーの四球が効きましたね。
5球目はどちらとも取れる実に際どいコースでした。
画面見ながら「あっぶねー!」と叫んだ人は多かったのでは?(苦笑)

二死1塁なら、今岡の打球は捕られていたでしょうから、
シェーンの選球眼がサヨナラを呼び込んだのですね。(^▽^*)
| 幸運虎 | 2006/06/13 10:39 AM |
途中出場して、勝利を確信したであろう自らの会心の打球を豊に好捕され、今岡の打球がグラブの数十センチ先を飛んでいくのを見送った高山選手。
名前を記憶にとどめておきたい選手になりました。
何という日だろうと思ったことでしょう。そのモヤモヤを是非中日戦で晴らしてもらいたいものです。
| まつたか | 2006/06/13 10:46 AM |
あー、いいなあ盛り込んで貰えて

俺も書けばよかった

その姿は中堅手というよりむしろ
ミュンヘンオリンピックの王古のブロックを髣髴させた

これwww
| Ryuhey | 2006/06/13 10:56 AM |
昨日のサッカーの敗戦で凹んでましたが、これを読んで少し復活しました。
今岡選手はやはり笑顔が似合いますね。
これからどんどん調子を上げていってほしいです。
サヨナラの直後、西武の選手(高山選手?)が今岡選手にウイニングボールを
渡していたようにみえたのですが気のせいでしょうか・・・
そうだとしたらなんかうれしいです。
| run | 2006/06/13 11:10 AM |
良かった、良かった、良かった・・・・・・・・・・・・・
ホンマよかった
今日から6連勝しろよ!!!
| よし | 2006/06/13 12:11 PM |
追加です
ユタカさまに「実はホントのヒーロー賞」を差し上げてくださいませ。
もし抜けていたら・・・
確実に負けていました。
| よし | 2006/06/13 12:27 PM |
私もポイントはスペンサーのところだと思います。小野寺も、まさかスペンサーが世にも稀な「振らない助っ人」だとは気づかなかったのでしょう(笑)。
それにしてもユタカは少ない出番の中で、インパクトあるプレーで魅せてくれます。今のタイガースに欠かせぬ“薬味”ですね。
| いわほー | 2006/06/13 12:30 PM |
意や〜味わい深い(^^)
ichikenさんの一文、うまいこと言うなあ〜

>金本
トリーがサヨナラ打打ったときも誰かに蹴り入れてましたね(笑)
アレは確か、フジモン・・・

西武というチームはホークスと一緒で次々主力が抜けていくのに(来年は多分松坂・・・)筍のようにニョキニョキ若い人が出てきます。
移籍組も活躍しています。
そこには西武野球と言う土台がしっかりと存在しているからでしょう。
そこへあのヤンチャ連中を当てはめて、育てていくのは伊東監督も我慢が要ったと思います。
あ、今も我慢してるのかな?(^^;)
失策の多いチームなんですが、今回は良く守ってましたね。
ヤンチャ西武、これからも注目です。
| りさ・ふぇるなんです | 2006/06/13 1:03 PM |
この試合スポーツニュースも殆ど省略で(サッカーで)翌日おは朝でちゃんと見たけど球児とJEFとユタカがほんましびれますねー。
3タテされなくて良かった。
| ルー | 2006/06/13 1:11 PM |
toraoさんの文章で、江草のバント処理の悪送球も久保田のワイルドピッチもサヨナラの一瞬のための伏線であるかのような美しい記憶になってしまいますねえ。
密かに江草のタイムリーも良かったです。
| まつたか | 2006/06/13 1:22 PM |
初の試み、コメントとのコラボはいかがでしたか?別に日本の敗戦を予見してやったわけぢゃないYO!

to ichikenさま
いわゆる主題として使わせていただきました。

to 西田辺さま
スウェーデンリレーって調べて初めて知りました。へー。まさにそうですね(笑)。

to 幸運虎さま
際どい球でしたが、確実に外れていましたし、スペンサーは自信を持って見切っていましたよ。まあ、「スキあらば見送ってやろう」と見る気満々だったことは間違いないですけど(笑)。

to まつたかさま
ああ、確かに高山にまつわる外野へのライナーが勝負を分けました。注目することにします。

to Ryuheyさま
そうや、書いてくれたら良かったのにい〜。
>ミュンヘンオリンピックの王古のブロックを髣髴させた
採用しないけど…(笑)

to runさま
時々、自らを鼓舞する作り笑顔をするときもありますが、この日のようなでっかい笑顔が最高なんです、今岡は!
サヨナラのウィニングボールはきっとそんな風にやりとりするもんなんでしょうね。

to よしさま
誰もがみな心の中で思っているから大丈夫。また、ユタカには立派な賞より、そっちの方が良く似合います。

to いわほーさま
ユタカはこれで今年の仕事終了でしょうか(笑)。もっと働いて欲しいと切に願います。

to りさ・ふぇるなんですさま
ライオンズ、良いですね。若いのがノビノビ、力いっぱい振ったり、走ったりしてて、気持ち良かったです。伊東監督という人自体が「西武野球」であると言っても良いわけで、人が変わっても伝統は生きるんですね。ある意味タイガースにもあるわけなんですが(笑)。

to るーさま
実は昨年の9/7の試合も、全国的には全日本対ホンジュラスの練習試合の陰に隠れて、誰も知りません(笑)。Tファンが騒いでいるだけです。なんとまぁ寂しいことでしょう。

to まつたかさま
試合って流れていますからね、ピンチの後にチャンス有りとは良く言ったもんですよ。
| torao | 2006/06/13 1:25 PM |
今、仙台駅前のお洒落なカフェで、
マンゴータルトを食いながら、
巨峰の紅茶を飲みながら、
後編を読ませて頂きました。

読みながら、泣いてもたやんかっ!
もう、おっさんがマンゴータルト食いながら
泣いてたら、きしょいちゅーねんっ!
あとで、ホテルに戻ったら、
もう一回、読も。

さぁー今日、明日とライブで応援だ!
タイガースを全力で応援して、
沖原をひっそりと応援するぞぉ〜
| grayghost | 2006/06/13 1:37 PM |
toraoさん
ありがとうございます〜。(涙)

豊さん、感動です。

>腕を目一杯伸ばして、捕った!勢い余って、着地後ぐるんと回転しても、グラブの口は堅く閉ざされたまま。

この場面、なんかスローモ-ションのように私の頭の中に再現されてます。
いいなあ・・・。toraoさんの文読んでると野球っていいなあってつくづく思います。

>金本。雰囲気ありまくり。

このオーラってリアルで観てないと感じられないものなんですよね。あ〜、観たかった・・・!
| yu | 2006/06/13 9:25 PM |
はじめまして(^^
去年からズットブログ拝見させていただいていました★
もう、toraoさんの文章にはいつも鳥肌が立ちっぱなしです。素晴らしいです。

で、いつもコメントしたいなぁ〜と思っていたのですが、私の虎歴に比べ、ここにいらっしゃる方々は本当に何十年と虎を見てきている方ばかりで物怖じしてしまって中々書き込むことができませんでした;

でも、今回初コメントをさせていただいたのも、私、この試合、1塁アルプスで見ていたんですよ(^^
それがまたこうして文章として改めて見させて頂いて、またまた感動してしまい書き込むことにさせていただきました(笑
本当に、11日の中村豊、今岡誠は最高でした。
今岡、涙目でしたよね(^^
あの球場に居た誰もが、あの瞬間、今岡を信じていました。
本当にいい試合でした。
いやぁ〜最高でした(笑

これからもブログ、覗かせていただきますので宜しくお願い致します(^^
| せら | 2006/06/13 10:57 PM |
なんじゃ?今日の試合は…

to grayghostさま
なんとも変な試合、しかもオッキーのサヨナラ、良かったですね、良くないか…(笑)。とにかく長時間、しかも雨、お疲れ様でした!

to yuさま
(昨日、お名前youさんて書いちゃった…ごめんなさい!)
気に入っていただけて、良かった!もったいぶった分、プレッシャーかかっちゃった(笑)。

to せらさま
ようこそ!コメント嬉しいです。正直なところ、虎歴はあまり気にして欲しくないんですよ。そんなこと言ってると年配者ばっかりになっちゃうから(笑)。
こういう精神のほとばしりが見られる試合って、そんなにあるもんじゃないですから、現場で見られたのは良かったですね。どうかまた遠慮なく書いて下さいね!
| torao | 2006/06/13 11:09 PM |
>1−1からの3球目、甘い直球を悠然と見送り、・・・・・

思わず、手に持っていたジョッキを、落としそうになりましたw




| でんまん | 2006/06/14 12:57 PM |
to でんまんさま
オフ会のこと、ご覧のとおり書きましたが、何か問題あるようでしたら教えて下さいね!
| torao | 2006/06/14 1:17 PM |

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