2008.06.08 Sunday
一人の投手に対して、チーム、ベンチみんなで、知恵を絞って必死になって戦って、やっとやっと勝てたんだから。だけどそれだけにこの1勝が嬉しい。この1勝がチームに与える影響が大きい。チームの結合力が強くなるような勝利だった。
しかし残念なプレーが一つ。9回ウラ、先頭フォードが左前ヒットで出塁。続く鳥谷が送りバント。しかしこれが捕手前の失敗バントとなって、二塁封殺、さらに一塁に転送されて鳥谷までアウト、ゲッツーとなる。下手なバントをしてしまったことも当然責められることだ。しかしそれよりも、ボールの行方やその後の処理を気にして全力疾走を怠ったことがもっと悪い。
もう一つは、4回ウラ。金本クリーンヒットの後、フォードが二ゴロ併殺コース。ところがこれを二塁本多が弾いてエラー、無死一二塁となる。ここで鳥谷が前進してくるライトの前にポトリと落とすライナー性の「ヒット」を打つが、一走フォードが二塁封殺となってしまう。自分がいる方向に飛んでくる打球は距離感が掴みにくいが、待機場所(一塁側すぎた)、判断時期(遅すぎた)が悪すぎた。際どいタイミングのプレーにはなると思うけどね、鳥谷にしたら「ライトゴロ」は残念だっただろう。フォードは走塁面でこれまで良い判断のプレーが多かった。打撃スランプが走塁にまで影響しているのかもね。
双方のプレーに因果関係はないと思うけどね(あったら、なお悪い)。「ベストの集中」ができていなかったという意味では残念な2つのプレーだった。
この試合でもう一つの「残念系」は、先発投手が2回で降板したことだろうか。抹消中安藤の枠で上がっていた能見を先発起用。2回を投げて2失点、好機で打席が回り、代打を送られた。せっかくの先発の機会だったのに…という声も聞こえてくるが、私はそれほど残念には思わなかった。もともとローテの谷間となってしまったこの日。相手投手は杉内である。前の日一つ先勝できている。実はこの日は、試合展開によっては「捨てゲーム」にすべき日程だった。ところが、チーム全体でこの日は杉内に勝つ試合にすると決めていた。岡田監督もそう決めていたし、満員のファンもそれを求めていた。まあどうしても必要なら、捨て試合はそのうち自然にできる。
だから、能見は「責任を負う」という意味の先発投手ではなく、できればもっとも長いイニングを投げてもらいたい投手という意味で一番最初に出てきたに過ぎない。試合展開や出来によっては続投もあっただろうが、あの2回で交代は良かっただろう。
能見の出来自体、そう悲観したものではなかった。前日久保田の直球に一発で合わせてきたように、ホークスは力負けしない打線。立ち上がりから矢野はコントロール重視の投げ分けを要求していたし、能見はそれに応えるよう懸命に投げていた。その気持ちは伝わって来た。2回は打ち取った打球がヒットになる不運が続いて無死一三塁。結局この二人の走者を帰してしまったのだから、もちろんイマイチではあったけれど、まあ、しゃあないなあと思う。先発としての評価を得るために、もう一度チャンスをあげても良いと思ったが、どう判断されるかは、他の投手の状況次第だろう。
2回ウラ、タイガース反撃は先頭金本左翼越え二塁打から。若いカウント、外角のいっぱいよりちょっとだけ甘いところで簡単にストライクを取るのが、杉内のような良い投手の条件。打っても100点満点の打球には絶対にならないし、「初球打ち」「早打ち」という非難の目もイヤだから、ついつい見逃して、1ストライクをやってしまうことになる。良い投手の場合は、この「ちょっと難しい球」を70点の打球で良いから積極的に打つというのが攻略方法の1つ。もちろん、それを感知されると対策もされちゃうんだけど、まずこっちから動いていかないと崩せないレベルの相手だ。この日の金本も、チームオーダー通り、そういう姿勢で打っていた。それはポテンで続いた鳥谷も、結果的にファール、ファールで追い込まれてしまった矢野にしても、同じだった(そういう指示を与えて特打までしたというフォードが消極的だったのは残念)。結果矢野は良い当たりのレフト前タイムリーヒット。後続は抑えられたが、取られた後の「半返し」で、「行ける行ける」のムードになった。
で、この日のヒーローの一人江草が、3,4,5回をゼロで抑える。後ろの投手に不安があって、「杉内完投」が最善手のホークスに対して、代えれば代えるほど良い投手が出てくるタイガースは好守のオプションが豊富。有利に試合を運べる。杉内さえ打てれば(笑)。
とにかく。序盤からモチャモチャしていたゲームを江草が裁いていく。「やっつけ仕事」に見える時もあるのだが、「考えすぎて仕事がはかどらない」よりずっとマシだし、「仕事がデキない」より遙かに良い。ヤツは間違いなく仕事のデキるヤツ。何の仕事を与えるかが問題なのだ。
だけどその「超ファインやっつけ仕事」は、5回二死松中の一つのタイムで流れ作業がグチャグチャに(笑)。四球、四球、ヒットで二死満塁。久保工場長がベルトコンベアの緊急停止スイッチを入れて点検するまで不良品を作っちゃうのが江草の面白いところ。
この日も守備は良かったね。バルディリス、鳥谷の三遊間は、イヤな当たりを俊敏に処理して投手を助けていた。5番に相応しくない打撃を続けているフォードだが、前日の試合でもこの試合でも、地味ながら良い守備を見せている。強いチームのベースになっている。
6,7回は渡辺。どうやら五輪メンバーに呼ばれるみたいだね。追加までして呼ばないってこともないだろうからね。実力通りにピシャリ。反撃を呼ぶ。
7回ウラ、先頭矢野がヒットで出塁。バルディリス、送りバント一発成功。守備でのハンドリングの良さそのもの。ボールタッチがやわらかいのだろう。今のところたいして打てないけど、下位の打者、守備の選手としては良い働きをしている。サードというポジションは攻撃の強い選手が入るべきなのだろうけど、今のチームカラーにはバルちゃんが合っているように思う。ムードの面でもね。
一死二塁、ここでとっておきの代打浅井。先の対杉内戦で2安打。あえて代打に回したというのはファインプレーかも知れない。追い込まれた後もしっかりと打席で投手を追い込んで、前進気味の外野守備陣を越える右中間同点三塁打!
外野手にコンバートされて、キャンプでは捕手としての練習を一切せず、しかしシーズンが始まったら他の捕手が不調だったり、不振だったり、結局「兼用」扱いでベンチ入り。リザーブ捕手という立場もあって出場機会は極端に少ない。しかし、もう外野手としてやっていくしかないと覚悟を決めて、打撃を磨いた今季、浅井の打撃は成長している。それは捕手としての成長にも繋がっているだろう。浅井をどうするつもりなのか、特に木戸コーチあたりにはそういうビジョンを持った指導をして欲しいと思う。
初めてのお立ち台良かったね、なんか上地くんぽくない?浅井って(笑)。
さて、7回ウラなお一死三塁に浅井で、赤星。浅いレフトフライで、浅井がギャンブルスタート、レフト松中ワンバウンドのバックホーム、捕手的山落ち着いて捕球、タッチ、どうだ、アウト!いいねえ!突っ込んだのも良いよ!刺したのも良い!両方ナイスプレー!勝ち越せなかったけど、今アウトになった浅井はベンチでみんなとタッチ、刺した松中もベンチでみんなとタッチ!さあ、こうなりゃ負ける気しないよ、いくら杉内相手でもね!
8,9回はジェフ。昨日はK&F締めでお休み。良い投球だった。
10回は藤川。先頭松中の右上腕に死球を当ててしまった。松中は大丈夫そうで良かった。死球というと先日のこともあるので心配したが、後続を断つ。でもちょっと疲れあるかな。
10回ウラ、一死、藤川へ代打葛城。浅井同様、葛城も打席を自分の優位に持って行けるようになった。考え方の整理なんだよね。自分は何をしたいのか、そのためにはどういうボールをどうしたいのか、そのためにはどういうボールは一切無視すべきなのか。その整理ができている。当然相手の心理や配球も想定しながら、対応していく。追い込まれてからは、自分の都合を捨て、相手の読みを優先させて食らいつく。ボール気味の低めのカーブを拾ったライト前ヒット、見事!
一死一塁、代走に秀太。で、赤星がバントを2つミス。変化球の曲がってくるところで待ってなきゃいけないのに、追いかけてしまってファール。仕方ないからヒッティングでそいつがセンター前ヒット。もう必死だよね、赤星も。
一死一二塁、関本。杉内の投球ももう142球、細かい制球がぶれ始め、スライダーが想定よりお辞儀して低くなる。関本四球、一死満塁。真綿でなんとかのような攻撃。
最後は新井がスライダーを狙い澄まして三遊間突破のサヨナラヒット。もうミート重視で対応できるほど杉内の球威は落ちていた。それでももし飛んだコースがサード、ショートの正面ならゲッツーだ。杉内は最後まで勝とうとしていた。
秀太ホームイン!一塁に駆け込んだ新井にむかって人が集まる。おなじみのサヨナラの光景。密集が解けると、その輪の中からなぜか着衣の乱れた藤本が出てくる(笑)。
浅井について伝える記事に、「控えのみんなで“準備を怠らないでいよう”と言い合っています」「桧山さんが出番のタイミングを読んで声を掛けてくれる。控えでは助かっています」(スポニチ)なんていうセリフが出てくる。勝っているチームには、活躍している人だけ、見えている人だけではなく、必ず小さな献身が積み重なっている。そのことを再認識させてくれた。
しかし残念なプレーが一つ。9回ウラ、先頭フォードが左前ヒットで出塁。続く鳥谷が送りバント。しかしこれが捕手前の失敗バントとなって、二塁封殺、さらに一塁に転送されて鳥谷までアウト、ゲッツーとなる。下手なバントをしてしまったことも当然責められることだ。しかしそれよりも、ボールの行方やその後の処理を気にして全力疾走を怠ったことがもっと悪い。
もう一つは、4回ウラ。金本クリーンヒットの後、フォードが二ゴロ併殺コース。ところがこれを二塁本多が弾いてエラー、無死一二塁となる。ここで鳥谷が前進してくるライトの前にポトリと落とすライナー性の「ヒット」を打つが、一走フォードが二塁封殺となってしまう。自分がいる方向に飛んでくる打球は距離感が掴みにくいが、待機場所(一塁側すぎた)、判断時期(遅すぎた)が悪すぎた。際どいタイミングのプレーにはなると思うけどね、鳥谷にしたら「ライトゴロ」は残念だっただろう。フォードは走塁面でこれまで良い判断のプレーが多かった。打撃スランプが走塁にまで影響しているのかもね。
双方のプレーに因果関係はないと思うけどね(あったら、なお悪い)。「ベストの集中」ができていなかったという意味では残念な2つのプレーだった。
この試合でもう一つの「残念系」は、先発投手が2回で降板したことだろうか。抹消中安藤の枠で上がっていた能見を先発起用。2回を投げて2失点、好機で打席が回り、代打を送られた。せっかくの先発の機会だったのに…という声も聞こえてくるが、私はそれほど残念には思わなかった。もともとローテの谷間となってしまったこの日。相手投手は杉内である。前の日一つ先勝できている。実はこの日は、試合展開によっては「捨てゲーム」にすべき日程だった。ところが、チーム全体でこの日は杉内に勝つ試合にすると決めていた。岡田監督もそう決めていたし、満員のファンもそれを求めていた。まあどうしても必要なら、捨て試合はそのうち自然にできる。
だから、能見は「責任を負う」という意味の先発投手ではなく、できればもっとも長いイニングを投げてもらいたい投手という意味で一番最初に出てきたに過ぎない。試合展開や出来によっては続投もあっただろうが、あの2回で交代は良かっただろう。
能見の出来自体、そう悲観したものではなかった。前日久保田の直球に一発で合わせてきたように、ホークスは力負けしない打線。立ち上がりから矢野はコントロール重視の投げ分けを要求していたし、能見はそれに応えるよう懸命に投げていた。その気持ちは伝わって来た。2回は打ち取った打球がヒットになる不運が続いて無死一三塁。結局この二人の走者を帰してしまったのだから、もちろんイマイチではあったけれど、まあ、しゃあないなあと思う。先発としての評価を得るために、もう一度チャンスをあげても良いと思ったが、どう判断されるかは、他の投手の状況次第だろう。
2回ウラ、タイガース反撃は先頭金本左翼越え二塁打から。若いカウント、外角のいっぱいよりちょっとだけ甘いところで簡単にストライクを取るのが、杉内のような良い投手の条件。打っても100点満点の打球には絶対にならないし、「初球打ち」「早打ち」という非難の目もイヤだから、ついつい見逃して、1ストライクをやってしまうことになる。良い投手の場合は、この「ちょっと難しい球」を70点の打球で良いから積極的に打つというのが攻略方法の1つ。もちろん、それを感知されると対策もされちゃうんだけど、まずこっちから動いていかないと崩せないレベルの相手だ。この日の金本も、チームオーダー通り、そういう姿勢で打っていた。それはポテンで続いた鳥谷も、結果的にファール、ファールで追い込まれてしまった矢野にしても、同じだった(そういう指示を与えて特打までしたというフォードが消極的だったのは残念)。結果矢野は良い当たりのレフト前タイムリーヒット。後続は抑えられたが、取られた後の「半返し」で、「行ける行ける」のムードになった。
で、この日のヒーローの一人江草が、3,4,5回をゼロで抑える。後ろの投手に不安があって、「杉内完投」が最善手のホークスに対して、代えれば代えるほど良い投手が出てくるタイガースは好守のオプションが豊富。有利に試合を運べる。杉内さえ打てれば(笑)。
とにかく。序盤からモチャモチャしていたゲームを江草が裁いていく。「やっつけ仕事」に見える時もあるのだが、「考えすぎて仕事がはかどらない」よりずっとマシだし、「仕事がデキない」より遙かに良い。ヤツは間違いなく仕事のデキるヤツ。何の仕事を与えるかが問題なのだ。
だけどその「超ファインやっつけ仕事」は、5回二死松中の一つのタイムで流れ作業がグチャグチャに(笑)。四球、四球、ヒットで二死満塁。久保工場長がベルトコンベアの緊急停止スイッチを入れて点検するまで不良品を作っちゃうのが江草の面白いところ。
この日も守備は良かったね。バルディリス、鳥谷の三遊間は、イヤな当たりを俊敏に処理して投手を助けていた。5番に相応しくない打撃を続けているフォードだが、前日の試合でもこの試合でも、地味ながら良い守備を見せている。強いチームのベースになっている。
6,7回は渡辺。どうやら五輪メンバーに呼ばれるみたいだね。追加までして呼ばないってこともないだろうからね。実力通りにピシャリ。反撃を呼ぶ。
7回ウラ、先頭矢野がヒットで出塁。バルディリス、送りバント一発成功。守備でのハンドリングの良さそのもの。ボールタッチがやわらかいのだろう。今のところたいして打てないけど、下位の打者、守備の選手としては良い働きをしている。サードというポジションは攻撃の強い選手が入るべきなのだろうけど、今のチームカラーにはバルちゃんが合っているように思う。ムードの面でもね。
一死二塁、ここでとっておきの代打浅井。先の対杉内戦で2安打。あえて代打に回したというのはファインプレーかも知れない。追い込まれた後もしっかりと打席で投手を追い込んで、前進気味の外野守備陣を越える右中間同点三塁打!
外野手にコンバートされて、キャンプでは捕手としての練習を一切せず、しかしシーズンが始まったら他の捕手が不調だったり、不振だったり、結局「兼用」扱いでベンチ入り。リザーブ捕手という立場もあって出場機会は極端に少ない。しかし、もう外野手としてやっていくしかないと覚悟を決めて、打撃を磨いた今季、浅井の打撃は成長している。それは捕手としての成長にも繋がっているだろう。浅井をどうするつもりなのか、特に木戸コーチあたりにはそういうビジョンを持った指導をして欲しいと思う。
初めてのお立ち台良かったね、なんか上地くんぽくない?浅井って(笑)。
さて、7回ウラなお一死三塁に浅井で、赤星。浅いレフトフライで、浅井がギャンブルスタート、レフト松中ワンバウンドのバックホーム、捕手的山落ち着いて捕球、タッチ、どうだ、アウト!いいねえ!突っ込んだのも良いよ!刺したのも良い!両方ナイスプレー!勝ち越せなかったけど、今アウトになった浅井はベンチでみんなとタッチ、刺した松中もベンチでみんなとタッチ!さあ、こうなりゃ負ける気しないよ、いくら杉内相手でもね!
8,9回はジェフ。昨日はK&F締めでお休み。良い投球だった。
10回は藤川。先頭松中の右上腕に死球を当ててしまった。松中は大丈夫そうで良かった。死球というと先日のこともあるので心配したが、後続を断つ。でもちょっと疲れあるかな。
10回ウラ、一死、藤川へ代打葛城。浅井同様、葛城も打席を自分の優位に持って行けるようになった。考え方の整理なんだよね。自分は何をしたいのか、そのためにはどういうボールをどうしたいのか、そのためにはどういうボールは一切無視すべきなのか。その整理ができている。当然相手の心理や配球も想定しながら、対応していく。追い込まれてからは、自分の都合を捨て、相手の読みを優先させて食らいつく。ボール気味の低めのカーブを拾ったライト前ヒット、見事!
一死一塁、代走に秀太。で、赤星がバントを2つミス。変化球の曲がってくるところで待ってなきゃいけないのに、追いかけてしまってファール。仕方ないからヒッティングでそいつがセンター前ヒット。もう必死だよね、赤星も。
一死一二塁、関本。杉内の投球ももう142球、細かい制球がぶれ始め、スライダーが想定よりお辞儀して低くなる。関本四球、一死満塁。真綿でなんとかのような攻撃。
最後は新井がスライダーを狙い澄まして三遊間突破のサヨナラヒット。もうミート重視で対応できるほど杉内の球威は落ちていた。それでももし飛んだコースがサード、ショートの正面ならゲッツーだ。杉内は最後まで勝とうとしていた。
秀太ホームイン!一塁に駆け込んだ新井にむかって人が集まる。おなじみのサヨナラの光景。密集が解けると、その輪の中からなぜか着衣の乱れた藤本が出てくる(笑)。
浅井について伝える記事に、「控えのみんなで“準備を怠らないでいよう”と言い合っています」「桧山さんが出番のタイミングを読んで声を掛けてくれる。控えでは助かっています」(スポニチ)なんていうセリフが出てくる。勝っているチームには、活躍している人だけ、見えている人だけではなく、必ず小さな献身が積み重なっている。そのことを再認識させてくれた。