2008.09.10 Wednesday
2−2同点にされた5回ウラ、関本二塁打、金本四球で一死一二塁。このチャンスで打席の鳥谷は当然ヒットで走者を返すことを考える。どういう打球で?併殺に備えて二遊間は二塁ベースに寄り、離塁を自由にさせないようファーストは一塁ベースを意識する。一二塁間は広い。一二塁間に強いゴロを転がせばヒットになる確率は高いし、例え追いついても野手の体勢が崩れて併殺になる確率は低い。またもし打ち上げてしまってもライトに距離が出れば二走は進める。アウトが一つ増えたとしても二走を進塁させたい。この、タイムリーを打ちたい、しかし最悪でも二死一三塁は作るという意図が大事なのだ。走者が三塁にいることで、配球に制約ができたり、投手の指先が緊張したり、野手が固くなったり、イレギュラーやラッキーボテボテでも1点になったり、とにかく可能性は大きく高まるのだ。だからこの一死一二塁で鳥谷は引っ張って強い打球を打つべきなのだ。だからインコース(どうせ来るのは高めの直球か、膝元へのスライダーか直球だ)に狙いを定め、一発で仕留めようと待っていなきゃいけない。カウント1−1から、その球が来たのに振れなかった。戦略がないから戦術もない。消極性というより頭の整理の問題だ。
同点のまま8回ウラ、先頭金本がボテボテ一ゴロ、投手五十嵐のベースカバーが遅れ、歩数も合わず内野安打になる。鳥谷の下手なバントも、五十嵐の平凡な守備に助けられて一死二塁。打席に葛城。ここも「決勝タイムリー」を打つべき場面。しかし、たとえ打球が正面に行っても走者は三塁に進めたい、そういう戦略は持つべきだろう。また決勝点に備えて外野は前に出てきている。したがって、やはり右方向へ強い打球、理想はライトオーバー、打ち損じて一二塁間ゴロヒットももちろんOK、そこそこのライトフライ、一ゴロ、二ゴロでも可、ということになる。しかし葛城がインコースの裁きが良いのは有名なので、甘い内角は期待薄、五十嵐の直球で基本的に外を攻めてくるだろう。カウント球が少しでも浮けば、少々強引に引っ掛けてでも踏み込んで振り切って良い。初球、その球、外高めの直球143km/h見逃しストライク。これが仕留めるべき球だった。その後、インコースの惜しいファールもあったし、最終的にヒット性の当たり(センターフライ)だったが、走者は進めず、結果は三振となんら変わらない。やはりあの初球だった。
そんなことは両選手とも後で考えれば、自分が打席に入っていなければ、当然わかっていることなのだ。しかしそのわかっていることができなくなるのが、追い上げられているという重圧であり、優勝を意識してしまうということなのだと思う。
8回ウラ、葛城倒れて走者進めず二死二塁に金本。代打桧山で勝負に来たのは、次の代打(矢野か高橋光)の方がイヤだったからだろう。しかし桧山は外に浮いたフォークを素直にレフト前に運ぶ。レフトは三遊間のすぐ奥にいて、この打球にバウンドを合わせる、タイミングがアウトなのは百も承知で腕を回す和田コーチ、金本が三塁を回るのとほぼ時を同じくしてレフト飯原が本塁へ返球、カットに入っていた三塁宮本が確信したようにスルー、正確なワンバウンド返球が福川のミットに収まる。もう金本にできることはボディアタックしかない。腕でタッチしに来るミットを攻め、左足をベース目がけて突っ込む。しかし福川がボールを落とすことはなくアウト、決勝点は入らなかった。
しばらく立てない金本。レガースの下で手術した左膝にダメージがあったらしい。
苦悶の表情を浮かべながら金本がようやく立ち上がり、歩き出す。最悪の事態ではないらしい、良かった。
葛城が走者を進めていれば、和田コーチが両腕を拡げて金本を制止していれば、クロスプレーもヒザへの衝撃もなかっただろう。だが勝利もなかったかも知れない。勝負のアヤはどうなっているのか誰にもわからない。だが頭の準備をしっかりして、いざ「迷ったら前へ」と突っ込んで行けば、たとえ失敗してもチームの闘志と集中力を喚起し、次の成功を導く。
藤川はクールに燃えていた。金本の勇気、闘志、覚悟に影響されていた。矢野もクールに燃えていた。勇気を持って藤川に変化球を投げさせた。そう藤川に変化球を投げさせるのは、勇気がいることなのだ。だが頭はクールに、今できるベストを計算していた。見事な三者凡退で、完全に「勝てる」という空気を作った。
しかしこの試合のキモは6回表だったかも知れないね。
先発岩田は大事な5回表に追いつかれて、せっかく初回、赤星の盗塁をからめた速攻で攻略しかけたのに、その後S先発ゴンザレスは完全に立ち直り気配。非常にイヤなムードの中盤になってしまった。
ましてや5回ウラのチャンスを逃して、6回表、Sは2番からの好打順。ここで岩田が平然と、淡々と、宮本・青木・畠山を三者凡退に打ち取った。ここで試合を落ち着かせたのが大きかった。こういう重圧の中で、しっかり腕を振って、強い気持ちを持ち続けられるんだから、岩田はどんどん成長していると思う。今のチームには、個人の勝ち星や新人王をかまってやっている余裕はないが、次は自分の力で引き寄せて欲しい。
そしてもう一人の功労者、アッチソン。優勝が決まった後で振り返った時、もしこの選手がいなかったら優勝はなかったかも知れない…岡田監督にそう思わせる一番手は、このアッチソンかも知れない。テンポ良く2回を6人で終わらせ、岩田が落ち着かせた試合を、タイガースペースに変えていった。
岩田が踏ん張り、アッチソンが引き寄せ、金本が闘魂注入して、藤川がつかんだこの試合、決めたのは矢野のサヨナラホームラン。
9回ウラの先頭打者として打席に入り、ファーストストライクのスライダーを見逃したが、その後の厳しいストライクはすべてファールした。巧みに誘ってくるボール球はきっちり見逃した。この回から出てきた押本の直球の走りが今ひとつだったおかげで対応できたのかもしれない。押本が抜き球を使わなかったのは練習中にしっくりこなかったからかも知れない。とにもかくにも必死で食らいついている内に、だんだんスイングに自信がみなぎってきた。11球目、押本が根負けしたか、それだけ投げれば失投もある。直球がついにど真ん中に。打った、行け、行け、うおおおお!フェンスまで達した青木の頭上を越えていった。思わず、立ち上がって、叫んだね(笑)。矢野のセンター方向は本当に良く伸びる。
いやあ、なんだか久しぶりにこう気分がスッキリというか、もやもやしていたものが消えたというか、そんな感じの試合だった。ドラゴンズも終盤でひっくり返してくれていたし、良い気分だった。
重圧の中の試合は、まだまだ続くのだけれど、足掛かりにしたい試合になったと思う。重圧はウチにだけかかるものじゃない。いち早く重圧に慣れて、重圧を活用する、そんな心境でプレーできたら良いよね。
一つ一つ。頭を整理して、やるべき事を決めたら、しっかり心の準備をして、勇気を持って思いっきりやる。今日も勝とう!
同点のまま8回ウラ、先頭金本がボテボテ一ゴロ、投手五十嵐のベースカバーが遅れ、歩数も合わず内野安打になる。鳥谷の下手なバントも、五十嵐の平凡な守備に助けられて一死二塁。打席に葛城。ここも「決勝タイムリー」を打つべき場面。しかし、たとえ打球が正面に行っても走者は三塁に進めたい、そういう戦略は持つべきだろう。また決勝点に備えて外野は前に出てきている。したがって、やはり右方向へ強い打球、理想はライトオーバー、打ち損じて一二塁間ゴロヒットももちろんOK、そこそこのライトフライ、一ゴロ、二ゴロでも可、ということになる。しかし葛城がインコースの裁きが良いのは有名なので、甘い内角は期待薄、五十嵐の直球で基本的に外を攻めてくるだろう。カウント球が少しでも浮けば、少々強引に引っ掛けてでも踏み込んで振り切って良い。初球、その球、外高めの直球143km/h見逃しストライク。これが仕留めるべき球だった。その後、インコースの惜しいファールもあったし、最終的にヒット性の当たり(センターフライ)だったが、走者は進めず、結果は三振となんら変わらない。やはりあの初球だった。
そんなことは両選手とも後で考えれば、自分が打席に入っていなければ、当然わかっていることなのだ。しかしそのわかっていることができなくなるのが、追い上げられているという重圧であり、優勝を意識してしまうということなのだと思う。
8回ウラ、葛城倒れて走者進めず二死二塁に金本。代打桧山で勝負に来たのは、次の代打(矢野か高橋光)の方がイヤだったからだろう。しかし桧山は外に浮いたフォークを素直にレフト前に運ぶ。レフトは三遊間のすぐ奥にいて、この打球にバウンドを合わせる、タイミングがアウトなのは百も承知で腕を回す和田コーチ、金本が三塁を回るのとほぼ時を同じくしてレフト飯原が本塁へ返球、カットに入っていた三塁宮本が確信したようにスルー、正確なワンバウンド返球が福川のミットに収まる。もう金本にできることはボディアタックしかない。腕でタッチしに来るミットを攻め、左足をベース目がけて突っ込む。しかし福川がボールを落とすことはなくアウト、決勝点は入らなかった。
しばらく立てない金本。レガースの下で手術した左膝にダメージがあったらしい。
苦悶の表情を浮かべながら金本がようやく立ち上がり、歩き出す。最悪の事態ではないらしい、良かった。
葛城が走者を進めていれば、和田コーチが両腕を拡げて金本を制止していれば、クロスプレーもヒザへの衝撃もなかっただろう。だが勝利もなかったかも知れない。勝負のアヤはどうなっているのか誰にもわからない。だが頭の準備をしっかりして、いざ「迷ったら前へ」と突っ込んで行けば、たとえ失敗してもチームの闘志と集中力を喚起し、次の成功を導く。
藤川はクールに燃えていた。金本の勇気、闘志、覚悟に影響されていた。矢野もクールに燃えていた。勇気を持って藤川に変化球を投げさせた。そう藤川に変化球を投げさせるのは、勇気がいることなのだ。だが頭はクールに、今できるベストを計算していた。見事な三者凡退で、完全に「勝てる」という空気を作った。
しかしこの試合のキモは6回表だったかも知れないね。
先発岩田は大事な5回表に追いつかれて、せっかく初回、赤星の盗塁をからめた速攻で攻略しかけたのに、その後S先発ゴンザレスは完全に立ち直り気配。非常にイヤなムードの中盤になってしまった。
ましてや5回ウラのチャンスを逃して、6回表、Sは2番からの好打順。ここで岩田が平然と、淡々と、宮本・青木・畠山を三者凡退に打ち取った。ここで試合を落ち着かせたのが大きかった。こういう重圧の中で、しっかり腕を振って、強い気持ちを持ち続けられるんだから、岩田はどんどん成長していると思う。今のチームには、個人の勝ち星や新人王をかまってやっている余裕はないが、次は自分の力で引き寄せて欲しい。
そしてもう一人の功労者、アッチソン。優勝が決まった後で振り返った時、もしこの選手がいなかったら優勝はなかったかも知れない…岡田監督にそう思わせる一番手は、このアッチソンかも知れない。テンポ良く2回を6人で終わらせ、岩田が落ち着かせた試合を、タイガースペースに変えていった。
岩田が踏ん張り、アッチソンが引き寄せ、金本が闘魂注入して、藤川がつかんだこの試合、決めたのは矢野のサヨナラホームラン。
9回ウラの先頭打者として打席に入り、ファーストストライクのスライダーを見逃したが、その後の厳しいストライクはすべてファールした。巧みに誘ってくるボール球はきっちり見逃した。この回から出てきた押本の直球の走りが今ひとつだったおかげで対応できたのかもしれない。押本が抜き球を使わなかったのは練習中にしっくりこなかったからかも知れない。とにもかくにも必死で食らいついている内に、だんだんスイングに自信がみなぎってきた。11球目、押本が根負けしたか、それだけ投げれば失投もある。直球がついにど真ん中に。打った、行け、行け、うおおおお!フェンスまで達した青木の頭上を越えていった。思わず、立ち上がって、叫んだね(笑)。矢野のセンター方向は本当に良く伸びる。
いやあ、なんだか久しぶりにこう気分がスッキリというか、もやもやしていたものが消えたというか、そんな感じの試合だった。ドラゴンズも終盤でひっくり返してくれていたし、良い気分だった。
重圧の中の試合は、まだまだ続くのだけれど、足掛かりにしたい試合になったと思う。重圧はウチにだけかかるものじゃない。いち早く重圧に慣れて、重圧を活用する、そんな心境でプレーできたら良いよね。
一つ一つ。頭を整理して、やるべき事を決めたら、しっかり心の準備をして、勇気を持って思いっきりやる。今日も勝とう!