自称阪神タイガース評論家（跡地）

　東京都のＡさん（３８）は苦笑いを浮かべるしかなかった。「お父さんのために今日だけは…と思ったけど、まあこれもお父さんが大好きだったスワローズらしいな」。
　Ａさんの父、Ｂさんは反骨心の人だった。偉そうなヤツは大嫌い。だからサラリーマン時代は出世しなかった。でも情けの人だった。困った人がいれば放っておけず、周囲から「損な性格」と言われるほどだが、後輩たちからは慕われていた。

　鉄道好きでもあったＢさんは、迷いなくプロ野球では国鉄を応援するようになり、以後スワローズ一筋。最弱チームだった時も、広岡監督で初優勝した時も、弱かった時も、黄金時代も、スワローズが勝てば喜び、負けては悔しがった。でも負けたあと少しすれば、「弱いからかわいいんだ。弱いチームが強くなるから楽しいんだ」と明るく笑っていた。

　去年の６月２９日、Ｂさんは多くの人に惜しまれつつこの世を去った。命日のこの日、Ａさんは朝から今日だけはスワローズに勝って欲しいと願っていた。試合が始まり、仕事が終わり帰宅するまでの間も経過が気になった。期待の赤川が序盤で点を失う。０−５。相手は柱の能見。そうそう思うとおりにはならない…半ばあきらめかけていた時だった。

　簡単に追い込まれた畠山が見極めよく四球で一死一二塁、やはり追い込まれたバレンティンが粘って失投を誘い３ランホームラン。試合の様子が一気に変わった。

　その後も若い中村のプロ１号、そしてＢさんがひいきにしていた宮出の今季１号、スワローズらしいお祭りムードで追い上げ追い越し、ミレッジのガッツあふれるダイビングキャッチで勢いづいた。よく声が出ていた。選手たちは、元気いっぱいグラウンドを駆け回っていた。ルーキー比屋根の好走塁が名手平野のエラーを呼び、驚きの大逆転劇。終わってみれば３年目の山本哲がプロ１勝。みんなで掴み取った今季ベストゲームだった。

　いつしか試合に引き込まれていたＡさんは、試合が終わってもしばらく呆然としていた。あまりにも素晴らしい試合だったからだ。このとき、ふっと父のやさしい笑顔が心に浮かんだ。「いい試合だったな。調子の悪い阪神はちょっとかわいそうだったが、スワローズにとっては最高の試合だったよ」そんな声まで聞こえるようだった…。

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　ま、そんなタワゴトはどうでもいいんだよ（笑）。５−０からの逆転だろうが、スミイチだろうが、チームとして力がないから負けたってこと。「あとちょっと」「もう一つ」が今までは打つ方にばかり出ていたが、さらに投げる方にも守る方にも出て来た。これは闘争本能をかきたてられるようなチームになっていないからだろう。

　平野のエラーは惜しかったね。あのバウンドでグラブに入ればゲッツーあったもんね。１点もやらないにはあれしかない。あの１プレーは勝負に行って（珍しく）平野が負けた結果。あれはしゃあない。タイガースにも見せ場、いいプレーはあったけど、あそこまで飲み込まれて行くということはやっぱり力がない。

　球児がいないからみんなで「がんばるしかない」。そこに具体性がなかったこともわかり、重鎮福原（大事ないことを願う）が離脱。何をしていかなきゃいけないかが、より明確になっていく。悪いことばかりがクローズアップされる時、チャンスを掴まなきゃいけない選手がいるのだ。

　今日先発は秋山。いつもの笑顔で投げたらいいよ。萎縮しないで勝負だ。