自称阪神タイガース評論家（跡地）

　せっかくいっぱいに入った甲子園だというのに、まるでナゴヤドームでやった試合のように、序盤２回エドガーの２ランホームランだけで決まってしまった。外側で追い込んで、インサイドにズバッといくはずが、この日唯一の失投となってど真ん中へ、それをものの見事に放り込まれてしまった。他は前回同様、打たれても要所を締めるスタンリッジらしい投球ができただけに悔やまれる。

　加藤も福原も筒井も、反撃を信じてよう投げた。

　一つまずまずのストライクを見逃して、あとはボール球と素晴らしい球にやられるパターン。絶妙な１ストライク目を投げた内海の調子は確かに良かったが、一部を除き振ってこない打線だから１ストライク目にいい球が行くというのもある。それを狙っていると感じれば、もうちょっと投げにくさが出てこようというもの。

　タイガース打線全体に強く振ることが求められているのは確かだが、それでも状況に応じてというのがなきゃ、そら点は入らない。無死二塁の走者がそのままでチェンジになるようなチームはやっぱり弱いとしか言いようがないし、大和のような打者はどんなサインが出ていようとも自分の打席が終わった時に、走者は進んでいなきゃいけない。または自分が入れ替わって塁に残り、塁上で投手にプレッシャーをかけなきゃいけない。

　打順で工夫という発想がどうしてもまったく採用されず「気持ちでなんとかしろ」がチーム方針のようだから、せめて選手個人個人で状況に応じて自分に求められるチームプレーを実践して欲しい（皮肉を言うのも疲れるけれどさ、はあ）。

　もっとも気になったシーンは、６回表一死でマートン。内海の制球が乱れてカウント３−１。ここでマートンは投球モーションの途中で打撃の構えを解いた。それに気を取られたわけではないだろうが、５球目はボールとなってマートンは一塁に歩く。塁上でエドガーと英語トーク、類推に過ぎないが「ワケわからない、バッティングカウントで『待て』だってよ」って感じのボヤキに見えた。

　そう言いたくなるのはよくわかる。この球を打たなきゃ２ストライクになってしまうじゃないか。それを「打つな」とはどういうことだ？「なんじゃそら」という抗議の「武装解除」であり、四球をもらってもその憤懣が収まらなかったのだろう。

　しかし当然ベンチにも言い分があって、四球が極端に少ない（310打席でわずか９だ）マートンは、バッティングカウントになってからでもボール球だけで勝負できると見透かされている。だから「待て」のサインで四球がもらえるのは計算通りだ。

　問題は、そんな簡単な理屈をマートンが理解できていないという事実。首脳陣の考えを受け入れる余裕がなくなってしまっているのだろう。これだけ状態が上がらないマートンを使い続けているのは、チームとしての打力が低すぎるのを「助っ人」の働きで押し上げて欲しいから。それなのに相手側からどう見られているか、どう攻略されているか、それに対してどう対抗するかについて、共通の認識を持てていない。それでは信頼関係など築けるはずもない。

　「やる気が感じられないマートンを使うな」という声には一理も二理もある。しかし「マートンのやる気」だけがワルモノなのではなさそう。そんなことがありありと伝わってきたシーンだった。

　まあそんなことはどうでもいいので、もうちょっと面白い試合をやって、できれば勝ってちょうだい。あのチームには。