2006.04.07 Friday
先発オクスプリングの出来は素晴らしかった。直球の表示は140km/h前後でも、コーナー低めにきっちり決めるコントロールがある。135km/h前後のカットボールで横にずらし、110km/h台のカーブでタテに揺さぶる。そのいずれもが意図したコース、高さに配置できていた。すべての球種でカウントを稼ぎ、すべての球種が勝負球になった。
オープン戦の時は、精度とテンポの面で問題があったが、すっかり変わっていた。
7回4安打無失点の83球。色々考えた末の交代だったのだろうが、勝ち星をつけたかった。
ブラウン監督の「熱さ」が表れた試合でもあった。8回表が終わって黒田の球数は101球。7番から始まる8回ウラの攻撃は、当然代打攻勢で来ると岡田監督は予想していただろう。だからこそ、初登板で見えない疲れのあるであろう好投オクスプリングを能見に代え、万一上位に回ったら藤川を投入しようという計画だったのだと思う。
しかし、ブラウン監督は一切代打を使わなかった。スタメン起用した選手をとことん信用し、成長の機会を与え、黒田に白星をつけようとこだわった。良いハートだと思った。
延長12回表、二死一二塁の好機、最後の打者になった片岡。前の回から代打で出て、守備につきもう一度打席が回る。まったく感じのない前の打席、3つ空振りで三球三振。ベンチには林もいる。しかし岡田監督は片岡を打席に送った。初球の直球、打つ気配はなかった。カウント1−2からの直球、振れなかった。2−2となってフォークに釣られて空振り三振。厳しい言い方だが激しく失望した。同じ三振でももっと気持ちの入った三振ってものがあるだろう。
同点打を打たれた藤川。打たれて楽になるという部分もあるだろう。ようやく低めに伸びるような球も見ることができた。まだまだバラバラだが光は見えてきた。
久保田も上向き。時折悪い回転の球もあるが、良くなってきた。
カープ先発黒田の出来は良かった。しかしその調子の良さを感じさせる前に、1点を奪ったタイガース初回の速攻は見事だった。赤星が初球を弾き返し、三塁左を抜く二塁打。藤本が初球をきっちりと二ゴロで走者三進。そしてシーツが初球レフト前ポテンで先制点。球数の縛りがあるブラウン広島のエース黒田に対し、受け身の待球作戦ではなく、初球狙いで攻めた。
3回も赤星の出塁から加点。三塁線へのバント安打。カープは、チームの方針でやや三塁線を空けて、三遊間を絞る陣形をとることが多いという。そのスキを見事についた。しかし続く藤本がバント失敗ファールから、空振り三振。激しい競争の中、「減点1」。それをシーツがライト前への巧打で挽回、一死一三塁。金本の打ちそこないの浅いレフトフライは、赤星だから帰って来られた。なかなか打てないエース黒田に対し、赤星スペシャルと、そつのない繋ぎで1点をもぎ取る攻撃を見せ、タイガースの得点バリエーションを感じさせた。
だからこそ、なんとか勝ちきりたかったのだが、勝負というのは生きている。岡田監督の動揺が、わずかなスキを生み、そこを一気に衝かれた。
2点リードの8回表、藤本とシーツの連打で、一死二三塁のビッグチャンス。カープは金本を敬遠し、一死満塁として今岡。昨年、イヤと言うほど痛い目に合わせてきた状況が、今季初めてやってきた。ここまでらしさが発揮できていない今岡だが、ガラっと変わるチャンスだ。金本への投球を見つめながら、みるみる気合が入っていく。「去年の今岡」が帰ってくるのか。ファンも、ナインも、岡田監督も、ある意味今年の命運を賭けるような気持ちで見守っていただろう。
だが結果はダブルプレー。ここは黒田の気迫が勝った。しかしそれ以上に、「あの」今岡が「この」局面で「最悪の」ゲッツーに倒れたという事実が、岡田監督の感情を揺らしていたのは間違いない。
今岡のバットで追加点を奪えれば勝利を決められた。しかし、そうならなかった今、2点で逃げ切ることに集中しなければいけない。ここで去年の岡田監督なら決して犯さなかった間違いをした。
オクスプリングから能見への交代は予定通りだったのだろう。しかし、前の回の最後の打者、しかも守備陣最大の不安である5番今岡に代えて投手能見、9番オクスプリングに代えて前田忠、または関本としなければいけなかったのだ。おそらく大事なところでゲッツーを打ってしまった今岡を、その顔を見て、スパッと代えられなかったのだろう。9番投手だけを代えた。
8回ウラ、打席の倉には見えていたのかも知れない。あるいはベンチからのサインだったのだろうか。相手を褒めるべきなのか。
三塁の今岡の意識と体が、今ここにあるボールではなく、直前の打席のままであることを見透かされていた。能見の初球を三塁線へセフティーバント。普通ならサードと衝突する程の深さまで能見が追いかけて処理するも間に合わず。この瞬間、投手と野手の間をつないでいた鎖が切れたようだった。続く山崎の当たりは投手へワンバウンドの強い当たり。これをキャッチしていれば1−6−3のゲッツー、もしとらなければ、予め二遊間を詰めていた鳥谷が取って6−6−3のゲッツーだったろう。しかし能見がはじいたボールは、鳥谷の左へ転がる。無死一二塁。
黒田のバントは捕手前、矢野と打者走者が交錯するようなプレーになったが、結果、送りバント成功で一死二三塁。
打順が一番に戻ったところで、投手交代。5番今岡に代えて藤川、9番能見に代えて関本。しかし「動揺」が開けた傷口は、元々あった不安に容赦なく染み込んでいった。
勝つべき試合を追いつかれ、普通なら負けている試合を分けた。能見、藤川、久保田、相木にとっては、考えるべきことも多い登板になったと思う。
試合後のベンチには、下手な試合をしてしまったという空気が流れていたが、藤川ら周囲を和ませるようなオクスプリングの表情が印象的だった。長い先を考えれば、反省と同時に何らかの意味を持つような1試合になるかも知れない。
オープン戦の時は、精度とテンポの面で問題があったが、すっかり変わっていた。
7回4安打無失点の83球。色々考えた末の交代だったのだろうが、勝ち星をつけたかった。
ブラウン監督の「熱さ」が表れた試合でもあった。8回表が終わって黒田の球数は101球。7番から始まる8回ウラの攻撃は、当然代打攻勢で来ると岡田監督は予想していただろう。だからこそ、初登板で見えない疲れのあるであろう好投オクスプリングを能見に代え、万一上位に回ったら藤川を投入しようという計画だったのだと思う。
しかし、ブラウン監督は一切代打を使わなかった。スタメン起用した選手をとことん信用し、成長の機会を与え、黒田に白星をつけようとこだわった。良いハートだと思った。
延長12回表、二死一二塁の好機、最後の打者になった片岡。前の回から代打で出て、守備につきもう一度打席が回る。まったく感じのない前の打席、3つ空振りで三球三振。ベンチには林もいる。しかし岡田監督は片岡を打席に送った。初球の直球、打つ気配はなかった。カウント1−2からの直球、振れなかった。2−2となってフォークに釣られて空振り三振。厳しい言い方だが激しく失望した。同じ三振でももっと気持ちの入った三振ってものがあるだろう。
同点打を打たれた藤川。打たれて楽になるという部分もあるだろう。ようやく低めに伸びるような球も見ることができた。まだまだバラバラだが光は見えてきた。
久保田も上向き。時折悪い回転の球もあるが、良くなってきた。
カープ先発黒田の出来は良かった。しかしその調子の良さを感じさせる前に、1点を奪ったタイガース初回の速攻は見事だった。赤星が初球を弾き返し、三塁左を抜く二塁打。藤本が初球をきっちりと二ゴロで走者三進。そしてシーツが初球レフト前ポテンで先制点。球数の縛りがあるブラウン広島のエース黒田に対し、受け身の待球作戦ではなく、初球狙いで攻めた。
3回も赤星の出塁から加点。三塁線へのバント安打。カープは、チームの方針でやや三塁線を空けて、三遊間を絞る陣形をとることが多いという。そのスキを見事についた。しかし続く藤本がバント失敗ファールから、空振り三振。激しい競争の中、「減点1」。それをシーツがライト前への巧打で挽回、一死一三塁。金本の打ちそこないの浅いレフトフライは、赤星だから帰って来られた。なかなか打てないエース黒田に対し、赤星スペシャルと、そつのない繋ぎで1点をもぎ取る攻撃を見せ、タイガースの得点バリエーションを感じさせた。
だからこそ、なんとか勝ちきりたかったのだが、勝負というのは生きている。岡田監督の動揺が、わずかなスキを生み、そこを一気に衝かれた。
2点リードの8回表、藤本とシーツの連打で、一死二三塁のビッグチャンス。カープは金本を敬遠し、一死満塁として今岡。昨年、イヤと言うほど痛い目に合わせてきた状況が、今季初めてやってきた。ここまでらしさが発揮できていない今岡だが、ガラっと変わるチャンスだ。金本への投球を見つめながら、みるみる気合が入っていく。「去年の今岡」が帰ってくるのか。ファンも、ナインも、岡田監督も、ある意味今年の命運を賭けるような気持ちで見守っていただろう。
だが結果はダブルプレー。ここは黒田の気迫が勝った。しかしそれ以上に、「あの」今岡が「この」局面で「最悪の」ゲッツーに倒れたという事実が、岡田監督の感情を揺らしていたのは間違いない。
今岡のバットで追加点を奪えれば勝利を決められた。しかし、そうならなかった今、2点で逃げ切ることに集中しなければいけない。ここで去年の岡田監督なら決して犯さなかった間違いをした。
オクスプリングから能見への交代は予定通りだったのだろう。しかし、前の回の最後の打者、しかも守備陣最大の不安である5番今岡に代えて投手能見、9番オクスプリングに代えて前田忠、または関本としなければいけなかったのだ。おそらく大事なところでゲッツーを打ってしまった今岡を、その顔を見て、スパッと代えられなかったのだろう。9番投手だけを代えた。
8回ウラ、打席の倉には見えていたのかも知れない。あるいはベンチからのサインだったのだろうか。相手を褒めるべきなのか。
三塁の今岡の意識と体が、今ここにあるボールではなく、直前の打席のままであることを見透かされていた。能見の初球を三塁線へセフティーバント。普通ならサードと衝突する程の深さまで能見が追いかけて処理するも間に合わず。この瞬間、投手と野手の間をつないでいた鎖が切れたようだった。続く山崎の当たりは投手へワンバウンドの強い当たり。これをキャッチしていれば1−6−3のゲッツー、もしとらなければ、予め二遊間を詰めていた鳥谷が取って6−6−3のゲッツーだったろう。しかし能見がはじいたボールは、鳥谷の左へ転がる。無死一二塁。
黒田のバントは捕手前、矢野と打者走者が交錯するようなプレーになったが、結果、送りバント成功で一死二三塁。
打順が一番に戻ったところで、投手交代。5番今岡に代えて藤川、9番能見に代えて関本。しかし「動揺」が開けた傷口は、元々あった不安に容赦なく染み込んでいった。
勝つべき試合を追いつかれ、普通なら負けている試合を分けた。能見、藤川、久保田、相木にとっては、考えるべきことも多い登板になったと思う。
試合後のベンチには、下手な試合をしてしまったという空気が流れていたが、藤川ら周囲を和ませるようなオクスプリングの表情が印象的だった。長い先を考えれば、反省と同時に何らかの意味を持つような1試合になるかも知れない。